自走する組織作りのためのコアコンセプト・マネジメント

第3回

「感情→思考→行動」という流れに沿った仕組みを作る

岩井 徹朗 2018年3月27日
 

ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。


「この本を読んで自分の価値観が変わった」

「あの出来事で価値観に変化が生まれた」

「あの人の価値観にはすごく共感する」


人はよく「価値観」という言葉を使います。そして、価値観は普通変わるものだと捉えています。このため、我々が「コアコンセプトとは一生変わらない深層価値観です」と説明すると、少し戸惑いを感じられるかもしれません。


では、自走する組織作りの核となるコアコンセプト、すなわち、深層価値観と一般に使われている価値観とは何がどう違うのでしょうか。


これはあくまで一つの概念ですが、我々は、価値観を人、経験、状況、知識、情報などによって「変化する価値観」と、どんなことがあろうと一生変わらない「深層価値観」の二つに分けて捉えています。


前者の「変化する価値観」は働いている環境や出会った人、身につけた知識等によって日々変化し、成長します。しかし、同じ経験をしても、ある人にはすごく印象に残っているのに、別の人にはまったく記憶にないということがあります。この点を理解するには、変化する価値観のさらに深層に迫っていく必要があります。


弊社のクライアントのAさん、子供の頃、おじいちゃんの家に電話するつもりで、間違って消防車を呼んでしまいました。すると、Aさんはこれがディープインパクトとして残り、その後、仕事をするにあたって、とても慎重に取り組む人になりました。


一方で、クライアントのBさん。子供の頃、やはり間違って電話をしてしまい、パトカーを呼んでしまったご経験があります。けれども、BさんはAさんから消防車の話を聞くまで、自分がパトカーを呼んで大騒ぎなったことを、すっかり忘れていました。そして、Bさんは、どちらかと言えば、何事にも積極的に取り組む人です。


このように、間違い電話で消防車(またはパトカー)を呼んでしまうという経験も、人に変化を及ぼす場合と、及ぼさない場合があります。つまり、Aさんは、先の事件で「わぁ、どうしよう」、「怖かった」という感情が動きました。そして、「大失敗した」、「電話をかける時も間違えないようにしないと、ダメだ」という思考が働き、「何事も慎重に行う」という行動に結びつきました。一方で、Bさんの場合は、特に感情が動かなかったので、この事件ではその後の思考や行動に変化が生まれていません。


行動を起こすには、思考が必要です。そして、思考のベースになるのが感情です。つまり、人は「感情→思考→行動」というステップを経て、初めて行動に移せます。だから、現実の行動に結びつけていくには、思考よりも感情、そして、感情が動くポイントを自覚することが前提になります。


行動できない理由の一つが、あれこれ考えすぎるという思考のパターンです。「慎重にやらないと、たいへんなことになる」という思考を持っている人は、これから起こるかもしれないリスクが気になって、行動を止めてしまいます。 


けれども、もしその人が「慎重にやらないと、たいへんなことになる」と思考する根底に、子供の頃に間違って消防車を呼んでしまって、すごく怖かったという感情があると結びつけられたら、どうでしょうか。 


人は本来感情を持った動物です。しかし、日々忙しい中で、自分の感情と真正面から向き合わないまま、思考し、行動しています。けれども、自分が「どんなことで感情が動くのか」が分かると、その後の思考を自分で上手くコントロールすることができます。そして、思考を自らコントロールできれば、主体的な行動につながるので、成果に結びつきやすくなります。


先のAさんも自分の慎重さの要因に消防車の呼び出し事件があったことを自覚された後では、「これは怖くないから大丈夫」と自ら意識することで、仕事を進める際のスピードが以前よりも速くなりました。


自走する組織を作る際には、社員の気持ちを「自分たち一人ひとりが主役となって、会社を成長させていこう」と奮い立たせることが必要です。


耳障りのいい経営理念をいくら並べても、人の感情は動きません。また、会社の規程を作ったり、マニュアルを整備したりしても、それだけでは「仏作って魂入れず」の状況に陥ります。まずはリーダーとして引っ張る人の感情が「やったら楽しい」、「ワクワクする」と動かない限り、他のメンバーも巻き込むことはできません


そこで、社長自身が自分は「どんなことで感情が動くのか」を明確な言葉として、自覚することが出発点になります。それが価値判断の基準となり、その後で、どう考え、どのように行動するのかにつながっていきます。


情報があふれかえっている時代、「あれもやらないとダメだ」「次はこれに取組まないとたいへんだ」というように、外部の情報に振り回されやすい状況にあります。けれども、自分の中で感情と紐づいた確固たる核心があれば、「いま会社が取り組むべき課題はこれだ」と確信を持って決断でき、行動につなげられるのです。


 
 

ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井徹朗


都市銀行に14年半在籍し、創業期のインターネット専業銀行とベンチャー企業の勤務を経て、2006年7月に独立。


「経営者が自然体で力を発揮するためのレールを敷く」ことをミッションとして、オーナー企業を中心に、業務改善、社内体制の構築や新規事業の創出に日々取り組んでいる。


最近はマーケティングのコーチである取締役と一緒に、「社長専任」の社外チームを組成。社長の本質的な価値観に沿った事業展開をマーケティングからマネジメントまでカバーし、洋々たる未来を一人ひとりが切り開いていく世界を実現するべく活動している。


HP:ヒーズ株式会社

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