自走する組織作りのためのコアコンセプト・マネジメント

第2回

社長が「これでいいのだ」という確信を持つ

岩井 徹朗 2018年3月8日
 

ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。


「これでいいのだ」

私が子供の頃によく見ていたテレビアニメ「天才バカボン」。その中でバカボンのパパが必ずしゃべる決め台詞。一見他人から見ると、「ちょっと変だなぁ」と思えることも、バカボンのパパの中では独自の価値観に基づく確信があります。


実は先日クライアントさんに、「ご自身の深層価値観であるコアコンセプトが見つかって何が良かったですか?」と質問したところ、「『これでいいんだ』を得られた」とおっしゃっていました。


そのクライアントさんは昨年90期目を迎えられた老舗メーカーの二代目社長。社長に就任されて10年以上、孤軍奮闘しながら、いろいろな経営改革に着手されておられました。経営理念を作り、会社のミッション、ビジョンを定め、社員教育にも熱心に取り組んでおられます。


一昨年、弊社のコンサルティングにお申込みいただき、最初の3ヵ月で社長の深層価値観、すなわち、自分自身の判断基準となる本質的な価値観であるコアコンセプトの発掘に取組んでいただきました。


そして、自分自身のコアコンセプトを言葉として定義した後、改めて自社の経営理念を振り返ってみると、「ありのままに判断してきたことが、コアコンセプトと深く結びついている」ことが分かり、「自信を持って進めていける」と再認識されたのです。まさに「これでいいのだ」を実感されたという訳です。


中小企業の特徴の一つは、大手企業と比べると、社長の影響力が非常に大きいということがあります。大手企業の場合は、分業体制も進み、部長も課長もいるので、社員が一番影響を受けるのは直属の上司です。これに対して、中小企業の場合は、たとえ部長や課長がいたとしても、トップダウンの指示で決まることが多いため、社員はたいてい社長の顔色を窺っています。


一方で、中小企業の社長の悩みは社員の育成。いつまでも指示待ちで動くのではなく、自分たちで考え、自分たちで判断し、自立的に行動してほしいと願っています。しかし、そこには一つ条件が備わっています。それは「社長の方針に沿って」というものです。


そして、この「社長の方針」というのが曲者です。人はそれぞれ独自の言葉の辞書を持っています。社長が押し売りなど無理な営業を止めさせるために「売り込みはしなくていい」という方針を出すと、社員の中には「問い合わせのあったお客さんにコンタクトしなくていい」と解釈する人がいます。


社長の真意は「お客さんに『買ってください』と言わせるのではなく、『売ってください』と言われるように工夫しろ」ということです。このため、問い合わせのあったお客さんに連絡しないということではなく、知恵を絞って接点を持つことを社員に期待しています。しかし、このようなニュアンスの違いはすぐには伝わらず、社員に社長の真意を浸透させていくには時間がかかります


実は前述の老舗企業の社長さんも、「10年以上かけて、社員がだいぶ育ってきたが、その動きを更に加速させたい」というご希望をお持ちでした。そして、自分のコアコンセプトが見つかって、「これでいいのだ」という確信を得たので、今まで作ってきた経営理念を自分のコアコンセプトに沿う形で表現を変えられました。すると、社員も腹にストンと落ちたのか、今まで以上に社長の指示に対する理解が深まったのです。


中小企業の場合、社長の影響力が大きいので、社長のコアコンセプトに沿った形で社員に伝えると、社員には「社長が目指しているのはこういうことだったのか」ということが社長の日頃の言動ともリンクして伝わるので、浸透のスピードが格段に上がります。一方で、中小企業では、社長に迷いが生じると、その迷いが社員に伝わって、不安を生み、会社の動きが鈍ってきます。


社長が自分の判断に対する迷いを断ち切り、「これでいいのだ」と確信を持って社員に接することができるかどうか。社員が自走する組織を作るためには、社長の確信が絶対に欠かせません。

 
 

ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井徹朗


都市銀行に14年半在籍し、創業期のインターネット専業銀行とベンチャー企業の勤務を経て、2006年7月に独立。


「経営者が自然体で力を発揮するためのレールを敷く」ことをミッションとして、オーナー企業を中心に、業務改善、社内体制の構築や新規事業の創出に日々取り組んでいる。


最近はマーケティングのコーチである取締役と一緒に、「社長専任」の社外チームを組成。社長の本質的な価値観に沿った事業展開をマーケティングからマネジメントまでカバーし、洋々たる未来を一人ひとりが切り開いていく世界を実現するべく活動している。

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