社長が知らない事業承継のお話

第2回

後継者が居ないって本当ですか?

桐明 幸弘 2021年5月11日
 

中小企業庁が以前に行ったアンケート調査の結果として、日本の中小企業の実に7割近くの経営者さんが、後継者が居ないという返答をしたそうです。後継者と一口に言っても、自分の息子や娘のことなのか、従業員のことなのか、あるいは外部招聘を期待しておられるのか、いろいろな要素が入ると思いますが、ここでは現社長が後継者として親族内承継を考えるという前提でお話をさせていただきます。


老舗企業の事業承継をみると、親族内で事業を代々引き継いでいる例が多く、日本の中小企業の多くは事業承継といえば、親族内承継をイメージしていると思います。老舗企業が長寿を誇る理由のひとつとして、事業承継を円滑に行う仕組みができているからだと考えています。それが、中小企業の約7割の経営者が、わが社には後継者が居ないと答えているのは大変な問題ではないでしょうか?このような回答をされる場合には、その理由として以下のことが考えられると思います。


① 会社の業績が悪くてとても息子や娘に譲ることができない。


② 息子や娘は既に大企業のサラリーマンとして勤めていて、いまさら規模の小さなこの会社を継いでくれとは言えない。


このような理由によって、後継者不在を表明しておられるとすれば、まだまだ解決策を検討する余地があると思います。なぜならば、いずれのケースでも再確認することや、あるいは正しい解決策を模索することで解決の糸口がみつかるかもしれないからです。では、順番にどのような解決策があるのか、その場合に後継者はどのように選別し、また育成したらいいのかについて解説してまいります。


① 「会社の業績が悪くてとても継がせられない。」というケース


業績が悪いといっても、実際に何がどのように悪いのかは会社の状況によって千差万別だと思います。試しに、縦軸に営業利益がプラスかマイナスか、横軸に資産超過か債務超過かをとった十字の図を描いてみてください。そうすると企業の財務状況は4つのタイプに分類できます。そうしてみると、営業利益がプラスで資産超過の会社は限られているのではないでしょうか?多くの業績が悪いという状態は債務超過の問題か、営業赤字の継続の問題に集約されると思います。この場合、債務超過のケースは事業再生支援策を施し、営業赤字のケースでは新たな事業収益を生む事業を新規開拓することで、後継ぎが円滑に事業承継に臨むことが可能になるのですが、対処法を誤ると会社存続さえ危ぶまれるような状態になりますので、慎重に対処されることが重要です。その方法については、また後日解説させていただきたいと思います。


② 「息子や娘は既に大手企業に勤務していて継ぐつもりがない。」というケース


この場合には、後継者が不在とあきらめる前にやることがあります。ひとつは、本当に息子さんや娘さんに家業を継ぐ意志がないのか、しっかりとコミュニケーションをとって確認してみることです。実際に私が相談を受けたケースで、社長であるお母さんが会社を売却しようと考えたけれども、私の助言で大手ゼネコンに勤務している息子さんに意志を確認したところ、息子さんには将来的に家業を継ぐ意志があることが判明し、売却を思いとどまったという話がありました。親子間での事業承継の話は、なかなか円滑なコミュニケーションがとれないのですが、一度は性根を据えて事業を引き継ぐ意志の有無を確かめてみることをお勧めします。また、もうひとつは、少し時間を置いてみることをお勧めします。なぜならば、自分の息子や娘がまだ小さかったり、若過ぎたりして事業承継の意志を確認することにあまり意味がないと思われても、一時的に従業員なり他の優秀な経営者をリリーフとして社長になってもらい、しかるべき時期に息子や娘を社長に就かせるということも可能だということです。今、この瞬間には継ぐ意志がないという息子や娘でも、20年もサラリーマン生活を続ければ、また心境の変化もあり得ると思います。少し時間を置くという作戦もありですね。


以上、今回は後継者が本当に居ないのですか、というお話をさせていただきました。次回は、事業承継とM&Aの関係についてお話したいと思います。


以上


 
 

プロフィール

株式会社インテグリティサポート
代表取締役 桐明 幸弘(きりあけ ゆきひろ)

福岡県出身、昭和55年「東洋信託銀行」(現三菱UFJ信託銀行)入行、平成2年に独立系のM&A仲介専門会社「レコフ」に入社。国際間M&Aアドバイス、不動産証券化企画など担当。米国不動産専門投資銀行「ソネンブリック・ゴールドマン・アジア」を経て、平成13年にトーマツグループのM&Aアドバイザリー子会社に入社。平成15年より監査法人トーマツにて事業再生部門を立ち上げ、ホテル・旅館等を中心に事業再生支援サービスに従事。平成19年に独立起業し「株式会社インテグリティサポート」代表取締役に就任。福岡市経営補佐顧問、神奈川県地方公社等専門部会委員、週刊ホテル・レストラン編集委員、太平洋クラブ株式会社社長など務める。



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