日本企業の海外進出と子会社管理

第2回

海外進出時のトラブル

山中 一郎 2018年11月20日
 

日本企業が海外に進出する場合、直接進出と間接進出という2つの形態に分かれます。

直接進出とは、企業が海外に出資をして子会社や現地企業との合弁会社を設立したり、支店や駐在員事務所を設置する形態です。また間接進出とは、企業が現地企業に生産や販売を委託したり、ライセンス生産をする形態などをいいます。直接進出、間接進出にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。


直接進出はうまく行った場合に、すべての成果を自社グループに囲い込める半面で、自ら出資する分、リスクが高く、また従業員を雇用するために撤退しにくいというデメリットがあります。海外進出する際、直接進出と間接進出のどちらを選択するのか?

自社が持っている資源と置かれている環境を分析して、より良い進出方法を選択することが必要です。

どのような進出形態でも、文化や習慣の異なる海外とビジネスを行うのですから、予期しない多くのトラブルが発生することが当然です。このトラブルは一様ではなくて、進出した企業の数だけパターンがあります。


直接進出のトラブルの例

人件費の安さを見込んで進出したが、従業員が定着せず生産性が極めて悪い

現地の従業員を雇用して生産を開始したが、従業員がストライキを起こして工場稼働の目途がつかない

本社が気付かないうちに現地の法人が法律違反を起こし、当局から認可の取り消しや営業停止を命じられた

仕入先からの部品納入が遅れがちであり、生産に差し障りが出ている

本社が子会社の状況をうまく把握できておらず、調査をすると金銭や在庫が横領されていた

輸入をしていたが、現地当局から関税に関して思わぬ追徴を受けた

移転価格税制について指摘を受け、法人税について問題となっている

間接進出のトラブルの例

海外代理店が積極的に販売活動を行わず、海外の販売量が増加しない

海外企業に生産委託をしたが、品質が安定しておらず、技術だけが流出している

技術供与を行ったが、契約外に生産されていてロイヤルティの支払いがごまかされている


海外進出する際、「うまく行く」ことを前提にして「大きな夢」を見がちです。

ただ現実にはうまくいかない企業も多く存在します。

例えば中小企業基盤整備機構が実施した、「平成28年度中小企業海外事業活動 実態調査報告書」によれば、「海外拠点の撤退を経験」している企業は全体の17%、「現在撤退を検討」している企業は9%ありました。


「周りの会社が海外進出しているから」、「日本ではあまりうまくいきそうもないから」といった曖昧な理由で海外進出して、大きな火傷を負って後悔しても後の祭りです。

まず海外進出の目的をしっかり持って、それを達成するためのトラブルを事前に予想すること。

そしてトラブルを少しでも減少させるために、進出前、進出後の調査や管理をしっかり行う必要があります。


以 上


 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。


主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数

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