7月27日、川崎市産業振興会館で第78回「かわさき起業家オーディション ビジネス・アイデアシーズ市場」(http://www. kawasaki-net.ne.jp/bizidea/)の最終選考会が開催された。
同オーディションは年6回開催しており、川崎市内に限らず日本全国からビジネスアイデアを募集している。受賞者は、販路拡大、資金調達の支援やベンチャーキャピタリスト、ビジネスパートナーとの出会いの場の提供などアイデアを実現するためのサポートを受けることができる。このオーディションは、平成13年11月の第1回から平成24年7月までで、全78回のオーディションを開催し、応募は学生を含めて1594件に達し、受賞者も535件を数えている。今回は、東京都大田区の木村工業、同品川区のエンザイム、そして神奈川県川崎市のBrimmer Brewing(ブリマーブルーイング)が、かわさき起業家優秀賞を受賞している。
木村工業(大田区)の木村晃一氏は、「配管技術習得設備を使った体系的な水道配管作業訓練受託事業」について発表。
同社は配管設備の「擬似的現場」を用意し、実際の工事現場以外で配管技術を学べる設備を設置することにより、大きな径の配管技術を学べる環境を実現することに成功した。現在、既存の座学用のカリキュラムに加え、擬似的現場設備を利用した実施訓練、安全衛生、近隣対応、社会人教育を含めたカリキュラムの策定を進めている。
木村氏がこのビジネスアイデアは考案した背景には、これまで日本国内でOJTによって行ってきた水道配管技術の継承が困難になってきていることがある。水道配管工事は配管作業自体より掘削、埋め戻し作業の時間の割合が多いため、若手作業員の技術の習得の機会が少なく定着率が低くなっている。また近年、中国を中心とした外国人作業員も増加はしているが、教育訓練がOJTのみであるため、技術習得が進んでいない。現状、径の大きい屋外配管工事の体系的教育コースは存在しないため、同社の「作業員教育受託事業」は国内初の試みである。
またエンザイム(品川区)の鈴木一哉氏は排水処理場における産業廃棄物排出第一位の汚泥を削減するシステム「エンザイム汚泥削減システム」について発表した。
イニシャルコストをかけずに成果報酬による汚泥削減を推進することにより、排出元の食品工場および地方自治体の廃棄物コストを導入リスクなしに削減できる。「弊社の汚泥削減システムを導入することにより環境にも優しく、企業、自治体のコストにも貢献できうるビジネスが創出される。この技術を従来廃棄物業者のイノベーション技術として営業展開していきたい」と鈴木氏は話した。
ブリマーブルーイングの小黒佳子氏はブリューマスター(醸造責任者)の資格を持つ米国出身のご主人と国際結婚している。夫の国際的なビール醸造経験を活かし、昨年4月に会社を設立し、今年3月より本格的にビールの製造・販売を開始した。小黒氏自身が川崎で生まれ育ったこともあり、「川崎の地ビール」を製造することで社会貢献ができればと思い、川崎市に醸造所を設立した。醸造所は川崎駅久地駅近くの住宅街にあり、客が気軽に立ち寄れるアットホームなブルワリーを目指している。樽とビンでのビール販売を行っており、樽は主に首都圏の飲食店等に卸し、ビンは6月中旬から一般販売を開始し、川崎市内や首都圏の酒屋等への卸売りも増加している。「会社帰りやお買い物のついでに立ち寄り、大手メーカーのビールとは違う、新鮮な手づくりビールをご家庭で気軽に楽しんでいただきたい」と小黒氏は話す。
【主催者賞受賞者】
▽かわさき起業家優秀賞/株式会社木村工業 木村晃一氏/エンザイム株式会社 鈴木邦威氏/株式会社Brimmer Brewing株式会社 小黒佳子氏▽かわさき起業家賞/ia corporation株式会社 朝比奈巌氏▽かわさきビジネス・アイデアシーズ賞/株式会社ネスト・ジャパン 下出谷治彦氏/株式会社アースリンク 久米隆廣氏
「フジサンケイビジネスアイ」