守田正夫理事長
東京都と神奈川県に営業店舗を展開している城南信用金庫は、地域の企業や住民の相談に応える体制を構築するなど、金融機関の枠を超えた「お客様応援企業」としての取り組みを続けている。中でも、中小企業の育成という点では「“よい仕事おこし”フェア」や「ビジネス商談会」といったイベントを継続的に開催するなど、質量ともに定評がある。少子高齢化やグローバル化、IT化が進む中で、中小企業に対する支援はどうあるべきなのか。同金庫の守田正夫理事長に、課題や展望、支援の現状などを聞いた。
--城南信用金庫の営業地域は国内では経済活動が活発なところだが、取引先企業、特に中小企業の現状をどうみるか
「中小企業の集積地である東京都大田区をはじめ、確かに国内では恵まれたエリアを営業地域にしている。しかし、中小企業の経営は決して楽観視できる状況にはない。このため、われわれも企業の発展や経営の改善を目指し、さまざまな取り組みを続けてきた。最近では、店舗単位での活動にとどまらず、金庫全体としての取り組みも始めている」
--以前から「“よい仕事おこし”フェア」や「ビジネス商談会」などを行ってきた
「5回目となった『“よい仕事おこし”フェア』については、今年も8月に東京・丸の内の東京国際フォーラムで実施した。今回は初めて全国47都道府県から計82の信用金庫が協賛・出展するなど、全国規模での協力体制ができてきた。今後、こうした全国的なネットワークを生かした企業支援も加速していきたい」
「昨年6月には、本店3階に法人個人を問わず、経営や相続に関することなど、さまざまなお客さまの悩みにお応えする相談コーナー『城南なんでも相談プラザ』を開設した。ここには、“ものづくり”に関するスペシャリストや各種専門家が在籍。企業の技術開発や生産管理から、雇用確保、補助金、税務といった話まで、幅広く対応している」
--こうした取り組みを通じた効果はどうか
「例えば、相談プラザでの相談の半数近くは法人からのものだ。即座に結果がでるものではないが、専門家が対応する体制を整えたことで、とても評判がよい。それとともに、お客さま同士のネットワークづくりを支援するため、同業者同士の交流会なども実施している。従来から実施している異業種間のマッチングに加え、同業種間の交流を活性化したことも、ビジネスの発展につながるきっかけになっている」
「一連のマッチング支援では、数%で商談や協業などが成立、約半数が取引を検討しているところだ。同業者同士の交流は、意外に思われるが意義も大きい。特に中小企業にとっては、大量の受注、多品種に及ぶ受注などの際に、協業できるなどのメリットがあるためだ」
--今後の展開、展望は
「今後は少子化の影響で、労働人口が減少していくと考えられる。すでにそのあおりで、従業員の採用に苦慮する中小企業も少なくない。このため、ITを活用した業務の効率化、生産性の向上に関する支援を強化していく。また、インターンシップ(就業体験)などを通じて学生の中小企業に対する理解を深める施策や、人材のマッチングイベントへの協賛などを通じ、中小企業の人材確保を支援していきたい。あわせて、全国の信用金庫と連携した企業支援を展開。全国規模で信用金庫と企業の“絆”を強めていきたいと思う」
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【プロフィル】
守田正夫もりた・まさお 1980年明大商卒。同年城南信用金庫に入庫。執行役員、常勤理事などを経て、2015年6月理事長に就任。60歳。東京都大田区出身。
【会社概要】城南信用金庫
▽本店=東京都品川区西五反田7-2-3
▽総資産=3兆7312億円
▽設立=1945年8月
▽従業員数=2126人
▽営業地域=東京都および神奈川県
「フジサンケイビジネスアイ」