安倍晋三首相が成長戦略の柱として「女性の活躍」を掲げる中、企業がもつ開放特許を活用して女性目線で商品アイデアを創出する取り組みが埼玉県で行われた。参加女性のアイデア力を磨き、商品開発に生かしたり、キャリア形成や起業などにつなげたりするのが狙いだ。商品アイデアを県内の中小・ベンチャー企業にも紹介する。商品化し販売ルートに乗れば、売り上げ拡大と雇用を創出。地域経済の活性化にもつながると県は期待する。
プロジェクト「開放特許を活用したウーマノミクス推進事業」は、富士通が開放特許を提供しアイデア出しのアドバイスなどを担い、埼玉縣信用金庫が商品アイデアを活用する企業の掘り起こしなどを受け持つ。また「埼玉版ウーマノミクスプロジェクト」を推進し女性のスキルアップに取り組む埼玉県は参加者の募集や商品化に向けたアドバイスを担う。
このように3者は「富士通が技術、埼玉縣信用金庫は販路で支援し、県もバックアップする」(埼玉県産業労働部の渡辺充雇用労働局長)と役割分担が明確で、女性目線で生まれたアイデアの商品化を企業に呼びかけて販路を開拓。女性が生き生きと活躍できる場を埼玉県内に創り出す考えだ。 商品のアイデア出しに意欲的な県内在住・在勤の女性を募ったが、子供連れの主婦、働く女性職員・社員など立場や環境が異なる女性が参加。昨年11月のオリエンテーションから交流を図りながら、グループ内の検討、中間報告を経て、3月23日にアイデア発表会を開催。5グループが家事や仕事の合間をみながら知恵を出し合い、磨き上げた商品アイデアを企業に対しプレゼンテーションを行った。
全5チームがアイデアを競った
富士通から用意された特許技術は①印刷画像へのコード埋め込み技術②打音分析による物品判定技術③光触媒チタンアパタイト④水没防止技術―の4つ。
このうち①の専用アプリを搭載したスマートフォンなどから読み取りができ、市販のカラープリンターから印刷出力ができる技術を採用したのが3グループ。最初に登場した「カランコエ」は「ママたちの井戸端会議から生まれた英語絵本」をプレゼン。2番手の「シャイナス」は「動画像再生機能付メッセージカード」を披露した。4番目に登場した「チームB」は入退場が楽になる素肌スタンプのアイデアを紹介した。
一方、2チームは③を選んだ。吸着性に優れた光触媒チタンアパタイトをさまざまな基材に塗布したり樹脂に練り込んだりすると表面に付着した汚れを分解し高い抗菌性能を発揮する。3番目に登場した「エレガント」は抗菌ヘルメットを説明。最後の「WAGAMAMA」は「ママ目線で商品開発した子供用プレイマット」について芝居を交えながら披露した。
プレゼン終了後、開放特許を提供した富士通の吾妻勝浩部長は「女性の気づきに加え、アンケートなどでニーズを調べたり、特許技術をよく理解したりしてアイデアを出している。全てを商品として仕上げたい」と高く評価。これを受ける格好で埼玉縣信用金庫の橋本義昭理事長は「女性目線で斬新なアイデアが生まれた。(女性のアイデアを中小企業に紹介する)出口はわれわれの得意とする分野」と女性アイデアと中小企業の橋渡し役に自信を見せた。
審査の結果、「埼玉版ウーマノミクス賞」にチームBとシャイナス、「富士通賞」にカランコエとエレガント、埼玉縣信用金庫賞にWAGAMAMAが選ばれた。
埼玉縣信用金庫賞を受賞した「WAGAMAMA」
埼玉県は大企業が保有する開放特許と県内の中小・ベンチャー企業を結びつけるマッチング事業に積極的。ただ、単に紹介するだけでなく、試作品開発から商品化、販路開拓まで面倒を見る。これまでも商品アイデアをインターネットで募集したり、地元大学の学生に呼びかけたりしてきた。今回は女性にターゲットを絞りアイデアを募った。
「フジサンケイビジネスアイ」