6月11日、「イノベーション都市」を掲げる川崎市の川崎市産業振興会館で、「かわさき起業家オーディション ビジネス・アイディアシーズ市場」(http://www.kawasaki-net.ne.jp/bizidea/)の最終選考会が開催された。
2001年に始まった同オーディションは、創業や新分野進出への登竜門として、広く全国から参加者を募っているのが特徴。年6回開催され、今回で65回を数える。これまでに学生を含めて1412件のアイディア応募があり、受賞件数も454件に達した。優れたアイデアに対しては、販路拡大・資金調達の支援、およびベンチャーキャピタリストやビジネスパートナーとの出会いの場の提供等、サポートが行われるという。
開会に先立ち、主催者である川崎市産業振興財団の曽禰純一郎理事長が「工業都市・川崎の原点は、1907年に横浜製糖(現・大日本明治製糖)が、幸区堀川町で近代的な大工場の操業を開始した時までさかのぼります。川崎発の元気な起業を育て、川崎の地から新たな産業イノベーションを起こしたい」と挨拶。
今回応募のあったビジネスプランは14件。そのうち、書類および面接審査を通過した7人が、同日、120人を超える聴衆の前で熱弁をふるった。最高賞の「かわさき起業家大賞」(川崎市長賞)は該当者がなかったが、テラモーターズ(東京都渋谷区)とアプライド・マイクロシステム(東京都調布市)の2社が「かわさき起業家優秀賞」を受賞した。
テラモーターズの徳重徹社長は「Eバイク時代の風雲児に」と題し、日本市場向けに開発した電動バイクのビジネス展開についてアイディアを説明。審査委員長を務めた同財団プロジェクトマネージャーの柴田嘉郎氏は、「電動バイクはCO2削減に役立つ環境に優しい乗り物で、インフラが整備されれば市場の拡大が期待できる。社会性、成長性、収益性が見込める優秀なプランだ」と講評を行った。
また、アプライド・マイクロシステムの加藤好志社長は、「ニードル式ディスペンサによる微少液滴塗布システム」についてプレゼン(写真)。
ディスペンサとは、液体を一定量吐出する装置。同社が開発した「ニードル式ディスペンサ」は、電子デバイスの製造工程で使われる伝導ペーストや接着剤などの微少量の液体を、所定の位置に高速で塗布するのに用いられる。従来製品では難しかった、高粘度液体の微少量塗布を可能にした点が評価された。「先端的技術ニーズに対応するとともに、新市場の開拓に貢献することが期待され、新規性および実現可能性が高い」(柴田氏)ことが受賞理由となった。
7人のプレゼン終了後、エリーパワー代表取締役社長の吉田博一氏が、「”環境が変えるこれからの経済・社会”~電力貯蔵用リチウムイオン電池が地球を救う~」と題して基調講演を行った。吉田氏は、リチウムイオン電池の普及に懸ける思いや今後のエネルギービジネスの展望について語ったほか、起業および経営の心構えを示した「ベンチャーの要諦」10カ条についても触れ、起業家たちに熱いエールを贈った。
なお、かわさき起業家大賞以外の主催者賞受賞者は次の通り。▽かわさき起業家賞/フジヤマ 藤井泰太郎氏、オオスミ 大角武志氏、光コーポレーション 田代幹二氏▽かわさきビジネス・アイデアシーズ賞/ヒットサイト 松永昭弘氏、クロスロードフラワー 鎌形美恵子氏
「フジサンケイビジネスアイ」