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今こそ、日本経済を支える 中小企業への手厚いサポートを

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日本経済を支える中小企業の数が年々減少している。産業構造の変化や後継者不足などがその背景にあり、地方創生を掲げる政府も中小企業を地域経済の担い手として期待しているだけに深刻な問題だ。活力ある中小企業の育成には何が必要なのか。経済産業省で中小企業政策などに携わってきた全国商工会連合会の増山壽一中小・小規模企業成長実行本部長に協同組合企業情報センターの山本柳二理事長が聞いた。


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協同組合企業情報センター理事長 山本柳二氏(左)、全国商工会連合会中小・小規模企業成長実行本部長 増山壽一氏(右)

山本 長い間、中小企業問題に取り組んできましたが現状についてどうどう見ていますか。

増山 これまでの10年間と同じことをやっていると日本の中小企業や地域はなくなってしまうと思います。日本の強さというのは優秀な中小企業があることだと思っています。日本では労働人口の8割以上が中小企業従事者ですが、国の中小企業予算は通常1000億円程度です。一方で地方にとっての基幹産業の農林水産業は、通常ベースで2兆円ですが、携わっている人は全産業の約4%。農林水産業は重要で強くならなければ、地域は活性化しないのですが、中小企業従事者は20倍いるのに20分の1の予算となっているわけです。予算面でももっと手厚いサポートをしないと地域は一体として強くなりません。

山本 ずいぶん開きがありますね。私は企業情報センターの理事長ですが、会社の経営者でもあります。立場の弱い小規模事業者や中小企業者はこれまで、取引先の関係などから政治にあまり関与してきませんでした。そういうことが予算にも表れているということでしょうか。

増山 十分ありますね。中小企業予算というのは、例えば、前年度と同じような予算なのに何か新しい見せ方をすることで新鮮に見えてしまい中小企業者は納得してしまう。こういうことではいけないと思いますし、私もしっかりアドバイスしていきたいと思っています。

山本 地方創生を掲げる政府は、地方の中核となる中堅・中小企業の活躍を後押しすべく、支援パッケージなどを策定しています。こうした支援策は効果があると思うので、もっと施策を充実させた方が良いと思うのですが。

増山 各地域によって悩みは違うのですが、半面で共通の課題もあります。今、衆議院の任期は4年ですが実質的には2年ごとに選挙が行われていて、そうなると中小企業予算や10年先を見据えた中小企業政策が実行できるのか疑問があります。地域経済の担い手として中小企業に期待するならば、支援策をもっと強化・拡充して長期的目線で考えていくべきです。


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中小企業予算の拡充と10年先を見据えた政策が必要と指摘する増山氏(右)と山本氏(左)

山本 「儲かる地域をつくる」「儲かる企業をつくる」、ことの実現に注力していますね。状況はどうですか。

増山 実際はなかなか難しいです。ただ、今政府は、「まち、ひと、しごと」と言っていますが、重要性の順番から言えば違うのではないかと思います。語呂がいいので、そういう順番になっていると思いたいですが、地域が元気で豊かなるにはまず仕事が重要です。仕事があって人が集まって来て、そこに街ができる。日本はこれまでそうやって街が形成されてきました。大事なのは仕事儲かる事業だということをもっと声高に言わないといけないと思っています。平成の大合併から10年が経ち、今まであまりつながりのない市町村が合併したことで、効率化という名のもとその地域の良さが失われているところもあります。10年後、20年後に街が消滅する、というレポートもありますが、仕事がなくなり、人がいなくなることが問題なわけです。

山本 とはいえ、地方では仕事が多くあるわけではありません。地域経済のけん引役でもある中小企業が生き残っていくにはどうすれば良いでしょうか。

増山 発想を変えることです。あるアンケート調査では、中小企業者の悩みの半分が販売先をどう確保するか、次に多いのが後継者不足です。この2つで約7割に達します。この悩みを解決できると、儲かる地域や中小企業はでてきます。地方の中小企業が販路を拡大するには、方法を変えることが大事です。地元やそのまわりだけでなく、インターネットで東京をはじめとする大都市圏やアジアの人々に販売することを考えることなどです。例えば観光で訪日する中国人は日本で爆買しますが、決してメイド・イン・チャイナは買いません。購入するのはメイド・イン・ジャパンなのです。しかも最近はメイド・・イン・ジャパンの中でも、メイド・イン・サガやメイド・イン・イシカワなど、地域の良い産品にも注目しています。近い将来、地方の産品がネットを経由して中国など海外で販売される日がきます。そうなれば、販路は拡大していきます。後継者不足については、地域で一番情報を持っていると思われる銀行が、地域を超えて後継者の情報を提供するような情報ネットワークを全国ベースでつくることも有効ですね。

山本 地域内で新しいビジネスの創出に取り組む必要もあると思います。多種多様な情報から新しいビジネスのタネを見つけ出し事業化していくことができれば、地域や中小企業振興になると思うのですが。

増山 農業と商工業による農工商連携で付加価値の高い商品を開発することや観光の産業化、また、地元木材などを使ったバイオマス発電の事業化などによって、地域で収益があがる仕組みをつくることも効果的です。この3つを軸にすると、新しい商売の芽も出てくるのではないでしょうか。山本理事長の企業情報センターは、企業の情報に着目してそれを価値にして形にするという具体的な行動をしていますね。企業がどんな悩みをもっているのかを知ることこそが情報で、その情報を形にしてリレーションしていくと、また違う形になって波及していきます。こういうことが地方創生のカギ、仕事をつくるカギ、後継者不足対策のカギになると思いますね。

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