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「事業性評価」が到来!あなたは資金調達できますか?

第41回

金融機関の審査方法

融資を受けようとする場合、金融機関がどのような方法で意思決定をするのか、頭に入れておくのは良いことです。

中小企業の経営者と話をしていると「金融機関の審査に時間がかかりすぎる」とか「なぜ、五月雨式で書類を要求してくるのか」という不満を、多く耳にします。言われてみるともっともなのですが、金融機関出身の私からすると、金融機関がそのような対応になってしまう理由も分かります。出身母体を身贔屓するという意味ではなく、「金融機関の手続きを知っておくと予め対策が打てますよ。少なくとも、ストレスを少なくすることができます」という理由から、金融機関の審査方法を頭に入れて置くようお勧めしています。


全体的な流れ:形式チェックと実質審査

金融機関は複雑な手続きを経て融資の意思決定をしていますが、時には長大になるプロセスは大きく分けると二つのプロセスから構成されています。形式チェックと、実質審査です。以下は、筆者が経験した金融機関や見聞きした金融機関についてご説明するもので、全ての金融機関がこの手順で行なっているという意味ではないことを念頭に置いてください(ここに記載している以外の手順で行なっている金融機関もあるでしょう。また、特に申込み金額が多額だったり、申込み企業の借入残高が多額にのぼる場合には、多くの金融機関が、ここに書かなかった手順を加えて審査を行なっています)。


形式チェック

融資の申込書が持ち込まれた場合、それはいきなり審査担当者に手渡される訳ではありません。受付担当者による形式チェックが行われます。受付担当者は、まず、次の検索・システム入力に必要な情報が適切に記載されているかどうかについて書類をざっとチェックします。記載漏れや難読文字などがなければ、申込書の必要項目を自社システムに入力します。

システムに借入希望者の名前を入力すると、過去に融資等の取引があるかどうかが確認され、取引があれば担当者が表示されます。また履歴等に係るデータ等が参照され、残高がある借入の当初借入金額や現在残高などの他、保証人や担保の有無、信用保証協会の利用状況等なども表示されます。過去に返済の滞りや、記載事項に悪意のある誤り(粉飾決算などを含む)などがあった場合にはサインが立つ場合があります。

システムで借入の現在残高が分かると、その申込書の決裁権者が決まります。多くの金融機関は借入残高で決裁権者を決めています。比較的低額の場合には支店長(本店の場合には営業部長)決裁ですが、各金融機関で定める基準額を上回った場合には本店審査部で再度チェックされた上で決裁されることになります。


実質審査

形式審査で特段の問題がなければ、実質チェックに入ります。実質チェックの手法は、実は金融機関によってかなり異なります。金融機関は審査手法について熱心に研究し、ブラッシュアップしているからです(多くの民間金融機関では中小企業だけでなく大企業の融資案件も審査しており、時には何億円、もしくはそれ以上の金額に及びます。このような金額の案件が貸し倒れると金融機関の屋台骨を揺るがしかねませんから、審査手法の研究・ブラッシュアップに熱心なのも当然といえます)。当然、全てについて説明し尽くせませんから、ポイントを絞ってご説明します。

金融機関は、融資申請を審査するに当たって、幾つかの視点を持っています。例えば「企業の状況」「借入の資金使途」「借り入れた資金を使っての効果」及び「返済の確実性」などです。


企業状況

金融機関は、借入申込に当たってみなさんが提出する借入申込書の「会社概要」欄や、添付する決算書(財務諸表。多くの場合3期分の提出が求められます)などにより申込み企業の状況をチェックしています。

「会社概要」欄の「主に取り扱う製品や提供するサービス」や「主たる顧客」、「主たる仕入先」などについて「これらが変わることなどあまりないのだから、いちいち書かせる必要はないのではないか。面倒臭い、と仰る経営者は少なくありません。しかし金融機関は、これら欄の記入を確認することで、みなさんの企業が今までと同様の事業をしているのか、業態変換したのか、サプライチェーンが変わっていないかなどをチェックしています。

会社が事業からあげているパフォーマンスは、主に決算書(財務諸表)を用いてチェックしています。決算書というと、最終的に利益が出ているかどうかだけ気にする経営者の方もおられますが、それを読み込み分析すると、企業のことがかなり正確に把握できます。金融機関は「実際の会計数字について、ある数字と別の数字を対比する(指標分析:例えば「売上高」と「売上高から仕入原価を差し引いた営業利益」を対比した「営業利益率」)」、「複数年度(多くの場合3年度)の推移を比較する(トレンド分析)」、会計数字や会計指標を他者と比較する(比較分析)」などを用いて、企業を正確に把握するように努めるのです。

財務諸表分析による結果をベースに中小企業を評価して「債務者格付け」を行い融資の可否を決めるのが、これまでの一般的な方法です(とはいえ「借入の資金使途」や「借り入れた資金を使っての効果」などの評価が低すぎると、最終的に融資は行えないと判断する場合もあります)。


資金使途

「借入の資金使途」は、借り入れようとするお金を中小企業が適切に使おうとしているかを見極めようとするものです。借入申込書には必ず「資金使途」を記載する欄があり、これをチェックしています。自社の運転資金や設備資金ではなく、他者(第三者企業はもちろん、経営者が個人的に使おうとする場合も含む)へ融通する資金について、金融機関は原則として、融資することはありません。また、企業の規模や事情などと対比して過大となる金額については減額する場合があります。


資金効果

「資金効果」は、借り入れた資金を使えば借入企業の経営状況が改善されるかどうかについて見極めようとするものです。「借入申込書には『資金効果』を記入する欄はないではないか」と感じる方もおられるでしょう。金融機関は「今後の見込み」欄などの記入事項や今後の売上・収支見込みなどから、資金効果をチェックしています。中小企業が自ら「資金導入の有効性は高いぞ」と主張するというよりも、金融機関として客観的に「この企業に資金を提供する意義が高いといえるか」と判断する姿勢だと言えるかもしれません。


返済の確実性

「返済の確実性」は、借り入れた資金について確実に返済できる状況にあるかどうかについて見極めようとするものです。これについても「借入申込書には『返済の確実性』を記入する欄はないではないか」と感じる方もおられるでしょう。金融機関は「返済原資」欄などの記入事項や今後の売上・収支見込みなどから、返済の確実性をチェックしています。中小企業が自ら「私は確実に借入金を返済できるぞ」と主張するというよりも、金融機関として客観的に「この企業は借入金をしっかりと返済できる体制・状況にあるといえるか」と判断する姿勢だと言えるかもしれません。


金融機関の審査方法を踏まえる

以上、金融機関の審査方法を学ぶことで、いろいろな示唆が得られます。ここでは一点、「金融機関にきちんと審査してもらいたかったら、きちんと情報提供することが有効」だということを強調しておきましょう。

融資担当者が申込みを審査する場合、情報が少なければ少ないほど判断に迷います。その時に担当者はどうするか?判断を間違えれば預金者からの貴重な資金を失うことを意味しますから、保守的な判断をするようになります。つまり、申込みをお断りしたくなるということです。必要な情報がきちんと提供されていれば、納得しながら判断することができます。

「金融機関に揚げ足を取られないように、できるだけ情報提供しないのが良い」という声も聞きます。実際、そのような実例もあるのでしょう。一方で、情報が不足すると「多分、大丈夫なんだろうな」との思いから保守的な結論(つまり借入申込みへのお断り)を導き出しがちだという事情があることも、心に留めておかれるのが良いのではないかと思います。

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プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫


中小企業診断士・MBA
日本政策金融公庫に約30年勤めた後、中小企業診断士として独立。 企業を強くする戦略策定の支援と実行段階におけるマネジメント支援を得意とすると共に、前向きに努力する中小企業の資金調達も支援する。 「儲ける力」を身に付けたい企業を応援する現在の中小企業金融支援政策に共感し、事業計画・経営改善計画の立案・実行の支援にも力を入れている。

企業概要

住所 〒160-0023
東京都 新宿区西新宿7-4-7 イマス浜田ビル 5階
設立 2015年10月1日
URL

http://stratecutions.jp/

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