マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>
第43回
現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(中編)
「リザルト・コントロールについて、教えて頂いているところです。先週はよもやま話的な展開になってしまいましたが、今週こそはリザルト・コントロールとは何かについて、教えてください。」
「よもやま話で悪かったな。そうリードしたのは中川課長の方ではないか。」
「いや、それは、申し訳ありません。」
リザルト・コントロールとは何か
「よもやま話ではいけないので、最初にきっちりと定義しておこうか。リザルト・コントロールとは、コントロールの対象者に実現すべき成果を目標として提示し、望ましい結果が得られた場合には報酬を与え、望ましくない結果が出てしまった場合には罰を与えると予め定めておくことにより、望ましい結果の実現に向けて努力するよう動機付けるコントロールだと言えるだろうな。」
「活動・行動を直接に規制するのではなく、目標が達成できた場合には昇給やボーナス・昇進などで報い、達成できなかった場合には減給やボーナスの不支給、昇進の停止または降格などにより罰を与えることによって、目標達成に向けて人々が頑張って活動したり行動を工夫したりするよう動機付けるコントロールでしたね。」
「そうなんだ。」
「またコントロールのやり方として、給料やボーナスを増減したり、昇進させたり降格させたりするだけでなく、創意工夫を引き出す研修やトレーニングもできるというお話でした。」
「よく覚えていたな。」
リザルト・コントロールを適切に行う
「ノルマについて、私の率直な意見を言わせてもらうと、安易に運用されているのではないかという印象を持っています。」
「それはどういう趣旨だ?」
「例えば多くの場合、売上がノルマになりますよね。しかし値引きなどして闇雲に売上をあげても利益に繋がらない場合があります。押し込み販売などすると一時は利益があがるかもしれませんが、翌期には反動がくる場合もあります。そういうことまで、よく考えられていない場合があると思うのです。」
「それはよい指摘だな。俺も、そう思うよ。リザルト・コントロールで提示される目標、つまりノルマなんだが、それを選ぶ際にはきちんと考える必要がある。」
「やっぱり、そうですよね。では、どうすれば良いのでしょうか?」
目標を目的の実現にリンクさせる
「さっきの中川課長の指摘は、目標を達成しても目的が実現できないのではないかという問題意識のように感じられたのだが、そうではないかな?」
「それです、それです。」
「そう。目標、言葉を変えるとノルマのことだが、それを達成すると目的が実現できるものでなければならない。例えば会社にとっては、その目標を達成すれば利益があがるということだ。」
「従業員にとっては給料があがることですね。」
複数の目標を提示して弊害を避ける
「ところで先ほども言いました。売上目標を達成したくて『後でキャンセルしても良いですから』なんて言いながら営業をかけるような状況は、どのようにしたら排除できるのですか?」
「そうだな。良くある光景だ。それを防止する方法として、複数の目標を提示するという手がある。」
「なるほど。例えば?」
「翌期の反動が既存顧客への押込み販売にあるとするならば、売上に占める新規顧客の割合も目標に加えることができるかもしれないな。」
「特定の目標だけでは弊害が生じる場合には、それを防ぐような別の目標も併せて立てれば良いのですね。」
「さりとて、あまりにも目標の数が多いとコントロールできなくなるだろうからな。一般的には2つ3つが適当ではないかと、俺は思っているよ。」
「なるほど。」
複数人・グループ目標の組合せを考える
「一方で、組織というのは、一人が目標を達成できれば組織としての目標を達成できるわけではありませんよね。そのような場合は、どうするのですか?」
「それはマネジメント側が、つまり会社の方がという意味だが、組み合わせをきちんと考えるということだろうな。」
「うーん、どういう意味ですか?」
「例えば、売上をあげて利益を出すという目標のもと、製造部門は新製品を開発することを目標とし、営業部門は従来製品を売り込んでいくという目標を掲げたら、どうなるだろう。」
「各部門が目標を達成しても、会社の利益はあがらないかもしれませんね。いや、より悪い状況になるかもしれません。受注残はあるのに、売る製品がないとか。」
「そうなんだ。だからその調整を行う必要がある。」
「そうか。会社として『従来品を新規顧客に売り込んでいく』という大方針を立てておいて、営業部門には顧客開拓に邁進することを目標と提示し、製造部門には新しい顧客からの要望にはすぐに応えることを目標として提示する訳ですね。そうすれば、ちぐはぐな取組みは防止できます。」
「そうなんだ。」
コラムマネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>
- 第1回 マネジメント改革を指示された
- 第2回 徳川家康とマックス・ウエーバーの亡霊に操られている?
- 第3回 上司はなぜ、部下に命令できるのか?
- 第4回 テイラーが生み出したマネジメント
- 第5回 働き手を助けることがマネジメントになるのか?
- 第6回 精神論ではないマネジメント体系を作り出していく
- 第7回 マネジメントのシステム化を考える
- 第8回 マネジメント・コントロール・システム(MCS)とは
- 第9回 普遍的ながら新たな示唆を与えてくれる
- 第10回 マネジメントをコントロールするとは
- 第11回 マネジメント・コントロールを行うシステム
- 第12回 現場マネジャーとは課長のこと?上位マネジャーとは?
- 第13回 上位マネジャーと現場マネジャーとの区切り
- 第14回 ベンチャー企業の経営危機に対処する(前編)
- 第15回 ベンチャー企業の経営危機に対処する(中編)発展段階説
- 第16回 ベンチャー企業の経営危機に対処する(後編)次の段階に対応する
- 第17回 上級マネジャーの役割(戦略機能)
- 第18回 上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(前編)
- 第19回 上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(中編)
- 第20回 上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(後編)
- 第21回 上級マネジャーの役割(間接部門を含めた部門間の連携)
- 第22回 上級マネジャーの役割(マネジメント体制の再整備)
- 第23回 上級マネジャーの役割(財務的成果マネジメント)
- 第24回 現場マネジャーの役割(全体像)
- 第25回 現場マネジャーの役割(現場パフォーマンス向上)(前編)
- 第26回 現場マネジャーの役割(現場パフォーマンス向上)(後編)
- 第27回 現場マネジャーの役割(連携)(前編)
- 第28回 現場マネジャーの役割(連携)後編
- 第29回 現場マネジャーの役割(戦略対応)(前編)
- 第30回 現場マネジャーの役割(戦略対応)中編
- 第31回 現場マネジャーの役割(戦略対応)(下編)
- 第32回 現場マネジャーの役割(矛盾解消)(上編)
- 第33回 現場マネジャーの役割(矛盾解消)(中編)
- 第34回 現場マネジャーの役割(矛盾解消)(後編)
- 第35回 現場マネジャーの役割(環境整備)(前編)
- 第36回 現場マネジャーの役割(環境整備)(後編)
- 第37回 現場マネジャーのマネジメント方法(全体像)(前編)
- 第38回 現場マネジャーのマネジメント方法(全体像)(後編)
- 第39回 現場マネジャーへのマネジメント方法(アクション・コントロール)(前編)
- 第40回 現場マネジャーのマネジメント方法(アクション・コントロール)(中編)
- 第41回 現場マネジャーのマネジメント方法(アクション・コントロール)(後編)
- 第42回 現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(前編)
- 第43回 現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(中編)
- 第44回 現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(後編)
- 第45回 現場マネジャーのマネジメント方法(ピープル・コントロール)(前編)
- 第46回 現場マネジャーのマネジメント方法(ピープル・マネジメント)(中編)
- 第47回 現場マネジャーのマネジメント方法(ピープル・コントロール)(後編)
- 第48回 現場マネジャーのマネジメント(総括)
- 第49回 本シリーズの総括(前編)
- 第50回 本シリーズの総括(後編)
プロフィール
StrateCutions
代表 落藤 伸夫
「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。
それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。
筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。