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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第18回

上級マネジャーの役割(現場マネジャーのマネジメント)(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「上級マネジャーのマネジメントについて、戦略に関する2つの役割は理解できました。次は何ですか?」

「次は、現場マネジャーをマネジメントする役割だ。」

「現場マネジャーをマネジメントする役割。当たり前すぎるような気がしますが。」

「確かにそうだな。しかし、一寸考えて欲しい。それは具体的には、どうすることなのだろう?」

「現場マネジャーの下した判断について、正しいか間違いか、判断していくことではないかと思いますが。」

「確かに、そう思っている上級マネジャーは多いかもしれないな。しかし、上級マネジャーが現場マネジャーの下した判断について判断し直すなら、その判断は最初から上級マネジャーが下せば良いではないか。その方が一回で済むぞ。」

「いや、トラブルがあった時だけ、そうするんですよ。」

「トラブルって?部下とか?」

「そうです。」

「じゃあ、部下は上司の指示が気に入らなかったら、トラブルを起こせば良いのか?そうしたら上級マネジャーが乗り込んできて、裁判をするのか?そして多くの場合、現場マネジャーが出した指示を訂正するのか?それが上級マネジャーのマネジメントのなのか?」

「それは違うようですね。」


マネジメント・コントロールに立ち戻って考えてみる

「以前に『マネジメント・コントロール』について考えてもらったよな。その時に立ち戻って考えてみたらどうだ。」

「確かに、それが良さそうですね。マネジメント・コントロールとは、自分が行ったマネジメントでは期待する成果が出なかったら、成果が出るようにマネジメントを調整することでした。」

「そうだ。現場マネジャーが現場をマネジメントする場合には、現場にあげて欲しい成果を伝えて、それが実際に得られるように指示命令を出したり、目標設定する、環境を整えるなどがマネジメントだった。それで成果が期待した得られないなら、指示命令のやり方を変えたり、目標を見なおす、違った環境を作り上げるなどを行うことがマネジメント・コントロールだ。」

「なるほど。」

「では、上級マネジャーが現場マネジャーをマネジメントする場合はどうなるのだろう?」

「そもそも、上級マネジャーがどのようにして現場マネジャーをマネジメントするか、考えなければならないということなんですね。」

「そうだ。そして、その中に入っていないのは・・・。」

「現場にトラブルがあった時に介入して、時には判断し直すことですね。」

「その通り。」


上級マネジャーによる4つのマネジメント

「MCSの考え方に基づくと、上級マネジャーによる現場マネジャーへのマネジメントは、主に4つの方法で行うことになるんだ。」

「それは何ですか?」

「『現場目標・現場戦略の策定・伝達』と『結果のフィードバック』、『モチベーションアップ』そして『配置・育成』だ。」

「なるほど。」


現場目標・現場戦略の策定・伝達

「最初は、現場目標や現場戦略を策定・伝達することだ。」

「『現場目標や現場戦略』ですって?初めて聞きました。部長の造語ですか?」

「よく分かったな。あまり使われていない言葉だと思うが、説明すれば意味は分かってもらえると思う。普通に耳にする言葉を現場に当てはめた言葉だからだ。」

「はい。お聞きしましょう。」

「企業は、普通、目標を掲げるよな。企業として実現したい目標を。」

「売上10%増とか、利益20%アップとかですね。」

「そうだ。そして、それに合わせて『新規取引先100社開拓』などと打ち出したりする。これの意味は分かるよな?」

「以前にもお聞きしたと思います。それは目標を実現するための経路を定めたということですよね。売上や利益の拡大は、既存取引先への売上拡大によるのではなく、取引先数の拡大により達成しようとすると決めたということです。」

「そうだ。経営戦略だな。目標実現のための経路を明らかにすることとも、言える。これが経営戦略の本質ではないかと、俺は思っているんだ。」

「なるほど。」


現場目標

「上級マネジャーは、企業としての目標を経営戦略に基いて実現する役割を担う。例えば会社としては『新規取引先100社』開拓なら、自分は30社開拓するなどとな。そしてそれを実現するために、部下である現場マネジャーをマネジメントすることになる。具体的には、どうすることだと思う?」

「上級マネジャーとして30社の新規開拓目標を実現できるように、部下である現場マネジャーに対して目標を割り振っていくのでしょうね。」

「そうなんだ。部下が各々の目標を達成すれば、自分が実現しなければならない目標も達成できるようにする。例えば自分の統括エリアに、需要の大きな地域と小さな地域があるとすれば、大きな地域には20社、小さな地域には10社を割り振って、トータルとして30社を実現できるようにする訳だ。」

「たぶん、売上目標や利益目標も同時に達成できるように、新規開拓しようとする取引先の規模や取引量なども決めていくのでしょうね。」

「その通りだ。そうやって現場目標を定め、伝達していく。」


現場戦略

「現場目標の策定・伝達は分かりました。現場戦略は、どうなんですか?」

「実は、このあたりが日本のマネジメントの弱いところじゃないかと思っているんだ。」

「えっ、どういうことですか?」

「現場には、自部門の新規開拓目標30社を実現できるように、部下である現場マネジャーに対して目標を割り振っていく。新規開拓すべき新規先の規模や取引量なども条件付けていく。この辺までは皆、やっているだろうと思う。」

「もちろん、そうです。」

「しかし、それで現場マネジャーが行動し、形の上では目標を達成した場合、それが真に自部門の成果になる、ひいては自社の成果に繋がるとの保証はあるのだろうか?」

「すごい話になってきましたね。どういう意味でしょうか?」

「例えば良質な新規取引先を30社開拓できたとする。でもそのせいで、これまでの取引先が元気がなくなったらどうする?新規取引先が従来の取引先を喰ってしまうような場合だ。」

「それはマズイですね。どうしたら良いのでしょう?」


「そこで、そういう事態を避けるような戦略を立てる必要が出てくる訳だ。」

「なるほど。その辺は、手薄かもしれませんね。でも、どうすれば良いのでしょう?」

「それを考えるために知恵を絞るのが上級マネジャーの役割だ。例えば俺は昔・・・。」

「良い実例があるのですね。」

「実際にそのようなことがあったので、次の時にはかなり慎重になったんだ。だから上から目標が提示された場合に、目標だけを部下に下すのではなく、まず自分で戦略を考えてみた。その前提として、かなり綿密なリサーチをしたよ。」

「ほう。」

「それで、既存取引先の邪魔にはならず、逆にシナジーが生まれそうな候補をピックアップしてみたんだ。その仮説が正しいか、取引先の担当役員にも話しを聞いた。」

「なるほど。」

「それで大丈夫だったので、『新規取引先として獲得したい企業のペルソナ』とも言えるようなものを作って、その基準でもって開拓するように指示したんだ。」

「うまくいきましたか?」

「最初、営業部隊からは『制約を付けられたから仕事がやりにくくなった』とブーイングがあがったけどな。でも期末には、取引先数目標は達成できても売上目標や利益目標が達成できないという事態にならずに済んで、納得したようだ。」

「なるほど。転ばぬ先の杖を用意しておくことも上級マネジャーの役割なんですね。」

「その時の戦略は、そういう意味があったということだな。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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