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ドラッカーから起業を学ぶ

第1回

起業家が最初に考えなければならないこと

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「今度、起業しようと思うのです。」

「ほう、とうとう決心したのですね?うまくいくと良いですね。」

「もちろん、成功させようと思っています。そこで、一つアドバイスを頂きたいと思いまして。」

「どんなことですか?お役に立てると良いのですが。」

「どうすることが、成功するための一番の近道でしょうか?」

「近道を考えないことですね。事業とは、なすべきこと全てを着実に行っていくことだと、私は考えています。近道というか、やるべきことをやらず済ませて手を抜こうと考えてしまうことが、失敗への一番の近道ではないかと、私は思っています。」

「いやいや、一本取られましたね。先ほどお聞きした意図は、手を抜きたいという意図ではありません。お聞きしたかったのは、これから起業するにあたって、絶対に忘れてはいけない原則は何かということです。」

「あなたが手を抜くような人ではないと思っていましたからね。ちょっと、冗談で言ってみただけですよ。」


ビジネスモデルを考える

「起業するにあたって必ず考えておかなければならない原則は何かというご質問について。私の経験からいうと、ビジネスモデルをきちんと描いておくことが大切です。」

「ビジネスモデルですか?よく言われていることですが、実際には何を考えたら、ビジネスモデルをきちんと考えたことになるのでしょうか?起業についてのセミナー等でも再々、出てきますが、実際にはピンとこないのです。」

「セミナーでは、どのように教えられたのですか?」

「ざっくばらんに言えば、どこから仕入れて、何を作って、誰に売るかという話です。でも、それって業種・業態ごとにだいたい決まっているではないですか。改めて書き出せという意味が分からないのです。」

「確かに、そのような書き出し方では、せっかくビジネスモデルを考えてもあまり活用できないかも知れませんね。面倒臭く感じてしまう気持ちも、分かるような気がします。」

「ビジネスモデルを活用するですって?どのように活用できるのですか?」

「ビジネスモデルをきちんと考えておくと、意思決定に役立つのです。ブレのない軸ができます。」


「儲け方」をあぶり出すビジネスモデル

「ビジネスモデルが意思決定に役立つなんて、考えたこともありません。そんな話、聞いたことがないと思います。」

「そうですか?それは残念でしたね。しかしビジネスモデルをきちんと考えると、同じ業種・業態でも、儲けの源泉は意外と異なるということに気が付きます。というか、それを明確にするのが、上手く考えられたビジネスモデルです。」

「というと?」

「例えばお弁当販売業者を考えてみましょう。全てのお弁当販売業者は、同じビジネスモデルですか?」

「そうではないのですか?」

「一個500円の弁当を作る業者と、一個3000円の弁当を作る業者が同じだと言えますか?」

「そう言われてみると、違いますね。」

「何が違うと思いますか?」

「儲け方が違うとでも言うのでしょうか?一個500円の業者は薄利多売でしょうし、3000円の業者は高付加価値でしょう。」

「そうすると、ターゲット顧客や自社に蓄積すべきノウハウや資源なども異なりますね。」

「確かに、そうです。」


意思決定に役立つビジネスモデル

「一個500円の業者は薄利多売に儲けの源泉があり、3000円の業者は高付加価値に源泉があります。これに気が付くことによって、どんなメリットがあると思いますか?」

「自分がどの方向性で考えていくべきか、分かるようになると思います。」

「良いですね。例えば?」

「うーん。」

「一個500円の弁当を売っている弁当屋が、もっと利益を出したいと考えたとします。おかずの材料を厳選して価格を上げることと、逆に製造方法を工夫してコストを下げること、どちらの策が妥当だと思いますか?」

「一般論でいうと、コストを下げることですね。材料を厳選して価格を上げた場合の顧客の反応は未知数ですから。というか、リーゾナブルな価格の弁当を探している顧客は、例えばブランド肉を使っているとはいっても価格が上がるのには抵抗感があると思います。」

「そうなんです。ビジネスモデルをきちんと考えていると、そういう判断が比較的簡単に、適切に行えるようになります。一方、ビジネスモデルを考えていないと軸がぶれて、不適切な結論を出してしまうかもしれません。だから、儲けの源泉がどこにあるかを明らかにするように、ビジネスモデルを考えることが大切なんです。」

「確かに。了解しました。」

 

プロフィール

StrateCutions (ストラテキューションズ)
落藤 伸夫


(StrateCutions代表)ドラッカー学会会員
中小企業診断士を目指していた平成9年にドラッカーに出会って以来、ドラッカーの著書をいつも座右の銘にしてきました。MBAを取得し、コンサルタントとして活動するにあたっても、企業人が考え行動する基本はドラッカーにあると感じています。ドラッカーの教えは、時には哲学的に思えることがありますが、企業が永らく繁榮するとともに、社会にある人々が幸福になることを目指していると思います。お客さま、社会、そして自分自身の「三方良し」の構図を作り上げることにより起業の成功を目指すドラッカーの知恵を、お楽しみ下さい!

<著書>
『ドラッカー「マネジメント」のメッセージを読みとる』


Webサイト:StrateCutions

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