IT技術を駆使した高品質なサービスを提供する
慶応大発ベンチャーのシュアールは、テレビ電話を介した遠隔手話通訳「モバイルサイン」サービスを提供している。商業施設やホテルなどにインターネット回線をつないだタブレットパソコンを設置。急な聴覚障害者の来客にも、同社の手話コールセンターにテレビ電話をかけることで手話通訳を利用できる。料金はモバイルサインを設置した事業者が払う。大木洵人社長は「大企業からの問い合わせも増えている」と、独自のビジネスモデルに自信を深める。
--ビジネスモデルが評価されて数々の賞を受賞した
「それに伴い取材対応も増えた。(知名度が上昇して)今まで会話もできなかった大企業のほうから『会って話をしたい』といわれるようになった。手話といえばボランティアだったが、それをビジネスにすることができた」
--モバイルサインを目にするようになった
「今年6月、JR東日本が定例社長会見で、東京駅や品川駅、上野駅など山手線内のインフォメーションセンター、総合案内カウンターなどに導入すると発表。聴覚障害者が遠隔手話通訳を無料で利用できるようになった。このサービスは他にも広がっていくはずだ」
--それだけニーズは高い
「障害者手帳を持つ聴覚障害者は全国に36万5000人。日常生活において手話でのコミュニケーション環境が提供されないので不自由な生活を強いられている。病院や学校など公共施設では手話通訳が提供されているが、買い物や仕事など私的利用には通訳を雇わなければならない。だから『いつでもどこでも手話通訳を』可能にするモバイルサインへの問い合わせも増えている」
--事業者が導入するメリットは
「導入していれば聴覚障害者にとって、したくてもできなかった注文などが可能になる。聴覚障害者に優しい事業者と評判になれば顧客満足度向上、ユニバーサル対応、社会貢献などで他社と差別化できる。ブランド力も高まり顧客増が見込める」
--ニーズの高まりへの対応は
「4月にはシュアールグループに所属する全スタッフが厚生労働省認定の手話通訳士の資格を取得した。これで公的機関も安心して遠隔手話通訳を利用できる。10月には福岡市に国内3拠点目となる九州コールセンターを開設した。サービスの質を高めるためで、“24時間対応”できる態勢作りに注力していく」 (松岡健夫)
【プロフィル】
大木洵人 おおき・じゅんと 慶応大学環境情報学部2年時の2008年にシュアール創業。シュアールグループ共同創業者、代表。手話通訳士。12年世界経済フォーラムGSC(グローバル・シェイパーズ・コミュニティ)メンバー。26歳。群馬県出身。
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【会社概要】シュアール
▽本社=神奈川県藤沢市遠藤4489-105 慶応藤沢イノベーションビレッジ
((電)0466・48・7640)
▽設立=2008年11月
▽資本金=200万円
▽事業内容=手話通訳サービス、手話関連製品の研究・開発・製造・販売
「フジサンケイビジネスアイ」