ハーツ・山口裕詮社長
運送業のハーツが提供するサービスは、運転手付きトラックを時間単位でレンタルする「レントラ便」。運転手自ら、簡単な引っ越しや荷物運搬などの作業を手伝うサービスが売り物で、割安な価格を武器に顧客も着実に増えている。山口裕詮社長は2020年に開催される東京五輪に向けた期間を一大商機ととらえており、「外国人観光客関連の需要を積極的に開拓していきたい」と意欲を示す。
--最近の業績はどういった形で推移しているのか
「受注件数は前年同期に比べて2割増の水準で伸びている。ただ、売り上げベースでみた場合、伸び率は2割を下回っている。荷物の積み降ろしは顧客自らが行うことで価格を低めに設定した、『レントラセルフ』の割合が拡大しているからだ。当社は個人向けのサービスが中心だが、このサービスについては、学校からの引き合いが強くなっている」
--今後の市場見通しは
「景気回復をあまり実感できず、不透明感がぬぐい切れていないのが現状だ。消費税率が引き上げられる来年4月が山場だと認識している」
--東京五輪の開催が決定したが
「春になると毎年決まって、香港の高校から修学旅行関連の依頼がある。スーツケースの運搬だ。2トントラックに約100個を詰め込んで、成田空港から東京を経由して目的地に運ぶ。今年は名古屋、京都、福山(広島県)に向かった。価格は安いし確実に届くため、評判は上々だ。五輪に向けて、団体の外国人観光客の増加が見込める。こうしたスーツケース関連の需要に対する期待は大きい。また、本番になれば選手が使う用具の運搬の仕事も増えるはず」
--外部との連携も積極的に進めている
「トランクルーム大手のキュラーズ(東京都品川区)と提携した。趣味の多様化などで需要が拡大しているものの、自家用車を保有していない顧客が多いため、キュラーズがレントラ便を紹介し、手続きや運搬をスムーズに行えるようにした。レントラ便の利用料金は、30分で3150円から。まずは関東地区を対象にサービスを開始し、エリアを拡大する。このほか、外国人の団体需要を効率的に取り込むため、大手旅行会社との提携も検討している」
--山口社長は東日本大震災の発生後、ボランティアで何度も現地に足を運び、救援物資の運搬なども行っている
「これまで37回にわたって現地を訪れた。復興は進んでいないので、今後も随時、被災地に向かう。来年3月には被災地支援の一環として宮城県気仙沼市の小学生にクラシックコンサートをプレゼントする。現地の音楽家らが参加してくれる見通しだ」
--気仙沼では地元企業と提携し、レントラ便事業を展開している
「まだまだ認知度は低いが、一度利用した顧客は、必ずリピーターになっていただいている。確かな手応えを感じている。東京五輪では仙台で、サッカーの予選が開催される予定だ。これに向けて新たな人の流れができるので、車種を拡充することによって攻勢をかける」(伊藤俊祐)
【プロフィル】山口裕詮
やまぐち・ひろあき 函館西高卒。大手運送会社を経て1993年に創業。95年にハーツを設立し、現職。44歳。北海道出身。
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【会社概要】ハーツ
▽本社=東京都品川区南大井5-12-3
▽設立=1995年10月
▽資本金=1300万円
▽営業拠点数=16カ所
▽事業内容=運転手付きレンタルトラック「レントラ便」
「フジサンケイビジネスアイ」