■貴重な文化財を婚礼施設に活用
青の壁が鮮やかな辻家庭園の母屋の「群青の間」、母屋は国の登録有形文化財
ブライダル大手のノバレーゼが、文化財に指定されている歴史的な建築物や庭園を活用した婚礼・レストラン施設を今年、相次いで開業する。明治天皇記念館として1935年に建設された「旧桜宮公会堂」(大阪市北区)に4月、今夏には加賀・前田家家老の横山家迎賓館兼別荘地だった「辻家庭園」(金沢市寺町)にそれぞれ新施設をオープン。貴重な場所での特別なウエディングをアピールし、集客増を狙う。
文化財に指定されている旧ジェームズ邸の洋館
同社は、昨年12月にも、神戸市指定文化財の洋館で三洋電機創業者の自邸だった「旧ジェームズ邸」(神戸市垂水区)を活用した婚礼・レストラン施設を開業。これまでに手がけた案件と開業予定のものを合わせ、歴史的な建築物の婚礼施設への再生は6件にのぼり、本業を通じた文化財の保護・活用を拡大している。ジェームズ邸は敷地面積が約1万3000平方メートル。物件を所有する三洋電機と20年の賃借契約を結び、建物の補修・改装や80席のチャペルと最大120人を収容する披露宴会場の新設などに約5億円を投じた。
ただ、ノバレーゼの浅田剛社長によると、物件契約の入札では「面積単位にすると考えられない安い価格で契約できた」という。貴重な邸宅だけに、入札では契約額以上に、建物のイメージにあった使い方や地元との調和など、物件運用の提案内容が重視されたためだ。旧桜宮公会堂や辻家庭園の案件も、文化財の持つ美観や独特の雰囲気を損なうことなく、婚礼施設として維持管理している実績が契約獲得に結びついている。
最新の再生案件となる辻家庭園では、婚礼を土日祝日の昼夜各1組に限定し、金沢市の指定文化財を貸し切りにできる特別感を演出。一方で、平日は婚礼施設の待合ラウンジでカフェを運営し、利用者が庭園を自由に散策できるよう一般開放する。
長引く景気低迷と厳しい地方財政などを背景に、文化財の保存管理負担が重荷になっているケースは多いとみられており、浅田社長は「ブライダルのような収益事業と連動し一般公開もしていく手法は、今後の文化財管理の1つの良いモデルになるのでは」と話している。(池田昇)
「フジサンケイビジネスアイ」