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【埼玉発 元気印】ベルニクス 小さくても世界一 新幹線などの電源装置製造

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製品の構想を練り実験が繰り返される「テクニカルセンター」=さいたま市南区

 トップが生まれ育った地元を拠点に、世界に誇る“技術”を次々に生み出し、送り出す企業がある。さいたま市に本社を置く「Bellnix(ベルニクス)」。電力で動くさまざまな機器に欠かせない、電源を開発・製作するメーカーだ。「夢と創造 そして愛」。社是に象徴される企業理念は、国際的に信頼を集める企業力の源となっているようだ。

◆活躍の場面は無限大

 「ちょっと『ニッチ』だけれども、それがないと世の中が回らない。そんな製品を作っているんです」。ベルニクスの鈴木正太郎社長は、ほほ笑みながら会社の概要を“解説”する。

 同社の主力は、高品質な電源装置の開発・生産だ。単純な製品を除いて、多くの電気製品は供給された電力を機器に適した電力に変換する必要がある。機器を正確、かつ安全に作動させるためには、信頼性の高い電源装置が欠かせない。

 同社の製品が生かされる分野は、「ニッチ」に収まりきらない幅広さがある。身近な通信機器や医療機器にはじまり、新幹線や発電所、果ては防衛システムや宇宙関連まで。同社の電源はさまざまなフィールドで高いシェアを誇っている。

 積み重ねてきた実績は、多くの受賞歴にも現れている。技術力や企業力を表彰する埼玉県知事賞を受賞したほか、さいたま市で「テクニカルブランド企業」に認定された。

 さらに、世界的に権威がある「EDNイノベーション・アワード」の電源部門でグランプリを受賞。日本の電源メーカーでは初めての快挙という。

 「難しくてよく分からないようで、いたるところにある。つまるところ、電源は人命・財産に関わる分野が大部分を占めているんです」。鈴木氏の言葉には、技術者としての自負がにじんでいる。

 鈴木氏はさいたま市出身。現在、ベルニクス本社となっている場所に実家があった。父はトランスメーカーの経営者。自然と、科学の分野に関心を持つようになった。自身も部品を買って、電気機器を作るような少年時代を過ごしたという。

◆人生を決める出合い

 大学では人生の道を決めるような“出合い”があった。「師事した先生は放電加工機が専門だったが、あるとき『電源を作れ』といわれた。それがきっかけ」。国内だけではなく、海外からも持ち込まれる電源に触れ、仕組みを知るほど、その奥深さに引き込まれた。

 しかし、学究に没頭するさなか父が亡くなる。「あまり気が進まなかった」が、父の会社を継ぎ技術部長を務めた。ただ、経営は思わしくなかった。

 並行して、1978年、弟で技術者の正春氏を代表に「ベルニクス」が創立。受け継いだ父の会社を閉鎖し、自身がベルニクス社長に就任、技術者数十人も加わった。当初は、主に下請けが中心だったが、競争力をつけようと、自社製品の開発にも力を注いだ。

 その後、過酷な環境に耐え、信頼性の高い電源の開発に成功する。これが電車のATS(自動列車停止装置)やATC(同制御装置)に採用、新幹線でも導入されるなど、市場での評価は高まっていった。

 「規模や物量では、大企業には絶対的に勝てない。磨き上げた画期的な技術があれば、企業として小さくても、世界一になれる」。大切な故郷を拠点に、次々と斬新なアイデアを具体化し、世界に羽ばたかせる意気込みをこう語った。(中村昌史)

【会社概要】ベルニクス
 ▽本社=さいたま市南区根岸5-7-8
 ▽設立=1978年
 ▽資本金=5800万円
 ▽従業員=92人
 ▽事業内容=産業用など各種電源装置、電源システムの開発、製造。子育て世代向けの安全性に配慮した自転車や、在庫管理システムなども手がける

 

≪インタビュー≫

■関心持つことで広がる可能性
鈴木正太郎社長

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 --企業にとって厳しい環境が続く中、生き残る道は

 「日本には資源がない。技術力頼み。世界の人々に必要な製品に技術を結びつけていく。経営者の志が『元気』の源になるのではないか」

 --技術を生み出すには

 「独自のノウハウを徹底的に強化して、それをさらに深めていくことで活路が生まれる。そこから、新しい技術が生まれる。『深(しん)は新(しん)なり』です」

 --「仕事」へのこだわりは

 「社是は『夢と創造 そして愛』。1回しかない人生。どうせなら、人のやらないことをやる。そして、素晴らしいモノができたとき、喜んでもらえる人がいること。同僚でも家族でもいい。周りに、そういう人がいてほしい」

 --自転車をはじめ新事業にも積極的に挑戦している

 「自転車は子供の安全を高めるシステムを強調した。さいたま市などと連携した事業。試乗で9割の人が『乗りやすい』と評価してくれた。生活を豊かにする分野への取り組みの一つ」

 --後進への期待は

 「若い人が起業してもらわないと、日本は落ち込むだけだ。使命感を持った起業家が必要。これは技術屋離れにも通じるところがある。日本は技術立国。国を元気にするには、われわれ起業家が背中を見せなければならないと思う」

 --起業家を育んでいくためには?

 「根本的には教育が悪い。勉強が暗記で記憶する世界になっていて、これがおもしろくない。勉強の過程や勉強の仕方を教えることが大事。それが、創造する喜びにもつながっていく。大人が若者に動機付けをしてあげるべきだ。テーマを見つけ関心を持つことで可能性が広がる」

 --創造力を発揮する鍵は

 「情報を整理する。人間はテーマがあるからこそ、発見することができる。起業家だけでなく、サラリーマンも同じ。何を考え、提示できるかが勝負だ」

【プロフィル】鈴木正太郎
 すずき・しょうたろう 1985年、ベルニクス社長に就任。「埼玉県渋沢栄一ビジネス大賞」など多数の表彰を受け「元気なモノ作り中小企業」にも選定。母校の日本大学などで講師も歴任している。62歳。埼玉県出身。

 

≪イチ押し!≫

■一円玉より小さい超小型

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 多種多様な電源を開発・生産するベルニクスにとって「すべてが自信持って提供する製品」だという。その中で、鈴木氏が悩みながらも「イチ押し商品」にあげたのが、一円玉よりも小さい超小型の電源「BSV-nano」だ。小型化、高規格化がめざましい集積回路。これを作動させる電源にも、最先端の技術が求められる。

 BSV-nanoは、セラミックなど複数の素材を融合し、画期的に小型ながらも放熱性に優れ、安定した電圧供給を実現している。シミュレーションを繰り返し、幾度もの失敗を重ねた末、生産に成功したBSV-nanoは世界的にも評価され、昨年、「EDNイノベーション・アワード」の電源部門でグランプリを受賞。国際的に最新の集積回路では、BSV-nanoを推奨電源としてあげるメーカーも多い。

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