スキー教室で笑顔をみせる小学生。引率舎は対話や安全管理を行いやすいよう名前入りゼッケンを子供に付けた=新潟県津南町
スキー教室や林間学校、キャンプ…。小中学生らが見聞を広めて情操を養う「教育旅行」の運営を受託するビジネスに力を入れる企業がある。子供旅行専門会社の引率舎(いんそつしゃ)(東京都葛飾区)。事業を通じて、多くの子供たちの成長を後押ししている。
同社は、小中学校などから教育旅行業務を受託し、旅行プランの企画から運営まで一手に引き受ける事業を強化する。受託件数を現状の年間8件から3倍の24件に増やしたい考え。
すでに多くの旅行会社が教育旅行分野に進出し、企画や宿泊施設などの各種手配に加えて、添乗業務を行っている。ただ、運営は学校の教職員に委ねる役割分担となっていた。
引率舎の役割は、単に運営部分を請け負い、教職員の業務負担を軽くするだけではない。練り上げた緻密な行動計画に沿って、質の高い旅を提供する。
仮に小学生向けスキー教室の運営を頼まれた場合は、保護者、児童、引率スタッフの3者が旅行前と道中に確認すべき事項を細かく整理した資料を作成し、各者に配布する。
中でも生徒用ガイドブックの特徴の一つが、教育旅行に持参する衣服や洗面道具などの必需品の準備を徹底させるように工夫していることだ。
宿泊を伴う旅行では、集合間際にスキーウエアの一部を忘れたことに気付くなど、身支度に手間取るケースが少なくない。そこで同社は、ガイドブック内の持ち物チェック票を充実させた。例えば、スキー教室で使う持ち物を「スキー」「室内着」「入浴着」など9つに区分し、使う場面ごとにポリ袋に入れるよう指示する。
これを受けて子供は、旅行前に両親と協力しながら、ガイドブックに添付された「荷物シール」を袋に貼る。さらに、荷物を詰めた各袋を旅行バッグに入れる順番まで指定した。旅行最終日に使う物から順に入れるように導き、子供がまごまごせずに取り出せるようにした。
この仕掛けは、豊富な経験に裏打ちされたノウハウを持つからこそ、なせる技だ。同社は旅行を機に、子供たちに整理整頓する自覚など、自立心が芽生えることを期待する。
岸幸成代表取締役は、高校進学以降に東京都葛飾区や民間スポーツクラブが主催する子供向けキャンプやスキー教室などに参加し、各行事の引率スタッフやディレクターとして活躍、「感動のドラマ」を演出する醍醐味(だいごみ)を味わった。岸氏は「経験を生かし、『楽しさ』『安全』『教育効果』を総合的に高めた教育旅行の実現を後押ししたい」と話す。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」