システムを使って静脈の登録を行っているところ
■手のひらサイズ PC安全対策
パソコンのセキュリティー対策としては、ログオンする際の指紋認証が広く知られている。しかし、この手法も決して万全ではない。手が汚れていたり指紋がすり減ったりした場合、反応しにくくなるといった根本的な問題に加え、中国などではシリコン製のキャップを使ってパソコンなどに付着している指紋を採取し、偽造するケースが発覚しているからだ。
一方、より高度な対策を講じる目的で、企業が取り入れ始めているのが静脈を認証する装置。生体認証の中では最も精度が高く、さまざまなタイプの商品が発売されている。
こうした中、手のひらに乗る小型・軽量タイプで使いやすい点を売り物にし、USBケーブルによって接続できる指静脈認証ユニットが登場した。販売を開始したのはコンピューター用の教材制作などを行うアテイン(東京都千代田区)だ。
ユニットはモフィリア(東京都品川区)、パーク(東京都港区)と共同で開発した。
静脈が集中しているのは、指の第1・第2関節の間。装置に指を置いて微妙に回転させる際に、体を透過しやすい近赤外線を横から斜めに当てて、その散乱光をCMOSセンサーで効率的に読み取り、静脈情報を認識する。この仕組みによって装置の小型化に成功した。正しく情報が登録されていれば、0.3秒以内で認証される。
この結果、指情報を登録された人がその場にいるときだけ、パソコンにログオンできるようになる。また、社外の人の出入りが激しい場所や、普段は人がいない機密書類倉庫などに設置されたパソコンに導入することで、第三者への情報漏洩(ろうえい)を防ぐことができる。
各種のネットにアクセスする場合、ID・パスワードをいちいち設定するのは面倒なため、統一するケースも少なくない。アテインの本多成人社長は「セキュリティー対策という観点からみれば危険な行為」と指摘するが、新開発のユニットを活用すれば問題はない。
また、家庭内のパソコンでは子供が勝手に操作し、多額の請求書が届くといったトラブルも散見されるが、こうした問題も回避できる。ユニットの価格は3万6800円で、初年度売り上げ計画は約2億円。主に小規模オフィスや病院などでの普及が進むとみている。
アテインはeラーニング関連ビジネスなどで実績を残しており、今回の新商品を機に、知名度向上を図る。(伊藤俊祐)
「フジサンケイビジネスアイ」