■優良物件ストックに力を注ぐ
越野建設・越野充博社長
東京都北区など、東京の城北地区を中心に、賃貸マンションの建設を行う越野建設は、3月に創業100周年を迎える名門だ。少子高齢化社会の進展など主力の賃貸市場を取り巻く環境が厳しさを増す中、越野充博社長は耐久性に優れた独自製法のコンクリートを武器に、「ストック社会に合った資産運用のあり方を、強く提唱していきたい」と語る。
--賃貸市場をどのようにとらえているのか
「人口が減少傾向にあり、普通に考えればストックはどんどん余っていく。現に地方では空き家が多くなっている。ただ、当社のメーンである城北地区には、こうした現象は当てはまらない。東京には厳然とした賃貸市場が存在しており、先進国の首都が急激に衰退するとは考えにくい。一方で、銀行は立地条件を吟味する傾向が強くなっている。10年後に現在と同じ貸し出し姿勢を保っているのか、疑問に思う。結果として新築の賃貸マンションは建ちにくくなるのではないか」
--そうした状況下での戦略は
「今、お金を借りる能力があれば借りて、これから10年以内に優良なストックを所有することが有効だと訴えている。鉄筋コンクリート住宅は、しっかりした品質のものを作れば100年の寿命がある。2040年ごろにローンを返却したあとも住み続けられる物件であれば、それだけ収益面のメリットも大きい。当社の賃貸マンション『ヴェージュシリーズ』では、耐久性に優れた結晶化コンクリートで差別化を図っている。ものづくりに真面目に取り組んでいる経営姿勢を示し、こうした良質な物件を建てていただくことが、今後の資産運用のあり方だと強く提唱していきたい」
--既存建物を再生するリノベーション事業にも力を入れている
「『ヴェージュリノベーション』という新ブランドを立ち上げた。バブル時に建てられたマンションが築30年を迎える2020年ごろには、本当のリノベーション時代を迎えるかもしれない。そのときに備えて、しっかりとノウハウを蓄積しておく必要がある」
--3月には創業100周年を迎える
「お先真っ暗となった時期は何度も到来したと思うが、よくバトンをつないでくれた。感謝したい。われわれの願いは、城北地区が今後厳しさを増す都市間競争で勝ち抜くこと。街の部品となる良質なストックを整備するとともに、CSR(企業の社会的責任)活動を通じ住民の絆を強め、街としての活力を高めたい」 (伊藤俊祐)
【プロフィル】
越野充博 こしの・みつひろ
早大商卒。1982年越野建設入社、91年から現職。53歳。東京都出身。
【会社概要】
越野建設
▽本社=東京都北区王子4-22-9
▽設立=1964年8月
▽資本金=8663万円
▽従業員数=47人
▽事業内容=賃貸マンションなどの建築
「フジサンケイビジネスアイ」