日総工産清水竜一社長
製造業向けに人材派遣や業務請負を手掛ける日総工産は、創業以来半世紀にわたり、自動車、電子部品、精密機器、住宅設備などの大手企業の現場に人材を供給してきた業界のパイオニア的存在だ。労働派遣法改正による派遣労働者に関する雇用契約の無期雇用への転換が4月以降実施されることで、大きな変革期が訪れようとしている。16日に東証1部市場に新規上場した清水竜一社長は、この変革期を乗り越えるため「研修を強化して人材の質を高め、利益率を向上させる」と話す。
--今のタイミングで上場した理由は
「2015年に施行された改正派遣法への対応を準備した上で、上場による信頼性の相乗効果を得たかったからだ。法改正による正社員化を含むキャリアアップ支援体制の拡充や、雇用安定措置の義務化は大きな変化だ。派遣労働者にはよいことだが、対応できずに事業継続が難しくなる派遣事業者も出てくるだろう。当社では法改正に対応した上で、今後予想される業界の変化を生き残るための準備もしてきた」
--どのような変化なのか
「4月から、派遣社員やパートタイマーなど非正規労働者が一定条件を満せば、勤め先に申し込んで無期雇用契約を結べるようになる。さらに労働法改正による同一労働同一賃金が実施されると、顧客の求める優秀な人材の確保が欠かせなくなる。従来は正社員と比べてスキルが劣っても人件費が安ければいいというニーズがあった。今後は求められるレベルが厳しくなり、変化に対応できる仕組みと体力、ノウハウのある会社だけが生き残ることになる」
--業績の推移は
「18年3月期の売上高は前期比10.1%増の589億2386万円、経常利益が同約2倍の16億6778万円を見込んでいる。一方、経常利益率の見込みは2.8%と低いレベルにある。これは研修に力を入れていることと、製造現場で管理・監督者を手厚く配置していることが要因だ。このため利益率を押し下げてしまうが、人材の質が高まり離職率も低くなるので、顧客企業から評価されるようになってきた」
--変革期を乗り切るために実行することは
「人材育成により注力する。このため上場によって調達した資金を活用し、4月に長野県岡谷市にある事業所を改装して新しい研修施設をオープンする。技能の高い人材を増やし、顧客のニーズに応えることで派遣単価の上昇や離職率の低下につなげる。このことにより3%に満たない経常利益率の改善を図りたい」
【プロフィル】
清水竜一
しみず・りゅういち 日大生産工卒。1986年朝比奈興産入社。88年日総工産入社。常務、副社長を経て、2004年4月から現職。56歳。神奈川県出身。
【会社概要】
日総工産
▽本社=横浜市港北区新横浜1-4-1 日総工産新横浜ビル
▽設立=1971年2月
▽資本金=19億4318万円
▽従業員=1554人 (2017年12月末時点)
▽売上高=589億2386万円 (18年3月期見込み)
▽事業内容=製造派遣、製造請負、職業紹介など
「フジサンケイビジネスアイ」