Liquid・久田康弘社長
画像処理やビッグデータ解析を活用して生体認証技術を開発しているLiquid(リキッド)は、安全性が高く認証も早い指紋による決済・認証サービスを展開、世界的に注目を集めている。特許取得技術を生かして世界で初めて生体認証だけで大規模ユーザー下でも本人の認証・決済サービスを迅速に提供できるからだ。昨年11月に開催された「革新ビジネスアワード2017」ではオーディエンス賞を受賞した。「生体認証の中で接触型の指紋認証は、閉じた空間でしか使えない非接触型と違って使われる環境に左右されず実用的」と語る久田康弘社長に現状と今後の展望などを聞いた。
--扱っている商品は
「登録した指紋をかざすだけで決済できる『パス』は指紋に現金をチャージしたり、クレジットカードを登録したりして使用。本人認証や決済を無人化できる。なりすましもできない。『リキッドキー』は指紋によるオフィスなどの入退室を管理でき、カードリーダーと同等の機能・価格で導入できる。『リキッドレジ』は指紋のほか、クレジットカードや電子マネーなどの決済にも対応できる」
--オフィスや店舗などでの利用状況は
「私たちが本社を構え、(金融とITを融合した)フィンテック企業が集積する東京・大手町ビル4階のFINOLAB(フィノラボ)にはリキッドキーが約60台設置され、入退室管理に使われている。ここを運営している三菱地所が1月に移転した新本社にはパスとリキッドキーが約80台入っており、このうち社員食堂のPOSレジに導入したパスには日本初の銀行口座後払いの仕組みを採用。クレジットカードを持っていなくても利用できるほか、カード導入に必要な加盟店側の手数料を低減できる。次世代の決済方法として展開を図っていく」
--大型リゾート施設「ハウステンボス」や温泉地でも使われている
「ハウステンボスは15年10月からパスを導入、年間会員向けサービスとして提供している。来園者はエントランスなどで指紋登録して現金をチャージすれば手ぶらでレストランの支払いや買い物を行える。温泉地では城崎(兵庫県)、湯河原(神奈川県)、湯の山(三重県)などが採用。『旅館で浴衣に着替えて温泉街で手ぶらで買い物』はシーンとして似合う。これらは経済産業省の『おもてなしプラットフォーム事業』の実証実験に採用されている」
--普及に向けた取り組みは
「財布やカード、キーなどを持ち歩かずに済むので便利だが使えるところが約2000カ所と少なく、しかもそのほとんどが都心。このためホテルや商店街などにも設置を呼びかけていく。一方で普及に向け、指紋認証による決済サービスを使いたいときに使えるようにスマートフォンで指紋動画を撮って登録する仕組みを研究中で、夏までには実用化したい」
--海外展開は
「インドネシアでは同国最大の財閥サリムグループと合弁会社を16年11月に設立、同グループが展開する小売業や流通業、金融など多岐にわたる事業分野で導入する予定。今は従業員の指紋登録を進めている。フィリピンでも政府が導入を検討しており、春から夏にかけて行われる入札に参加する。内閣府の国際広報動画『イノベーション・ジャパン』シリーズで『画像Liquidデータに依拠しない生体認証』として紹介され、世界から注目を集めた。タイやマレーシアなどへの進出も考えており、近場から攻める」
【プロフィル】
久田康弘
くだ・やすひろ 慶応大学法学部卒。2008年大和証券SMBC(現大和証券)入社。ベンチャー企業の事業推進や技術顧問などを経て、2013年Liquid設立し社長。32歳。沖縄県出身。
【プロフィル】
Liquid
▽本社=東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル4階
▽設立=2013年12月
▽従業員数=50人(2017年10月現在)
▽事業内容=画像認識エンジンの研究・開発、生体照合端末の企画・開発・製造
「フジサンケイビジネスアイ」