柳瀬良奎社長
□ワイズグローバルビジョン・柳瀬良奎社長
「世界中の水問題を個人レベルで解決」をミッションに掲げるワイズグローバルビジョンは海水を飲み水に変える装置や、災害時に飲み水を確保する浄水器の開発により2013年度のイノベーションズアイアワード(現在は革新ビジネスアワード)の大賞を受賞した。これを機に、軽量コンパクトをセールスポイントに、国内外で市場開拓に本格的に乗り出した。柳瀬良奎社長は、水のスモールインフラ事業による“水の地産地消”を目指す。
--4月に発生した熊本地震の被災地支援にも浄水器が役立った
「災害時に最も対応力の高い手動式ハンディ浄水器『ウォーターピュア』を被災地支援のボランティア団体を通じて寄付した。河川の水も雨水も1台で最大1万リットル浄水できる。1人当たり1日約2リットルの飲み水を確保する必要があるといわれるので、1台あれば5000人日分を確保できる」
--自治体から注目されるきっかけになったのでは
「被災地では水道が復旧してもさびや菌が発生していて、水を飲むことができない。ウォーターピュアを使えばすぐに飲める。この『すぐ飲める』に意義があり、非常時には心強い備えになる。水の大切さに自治体もようやく気づいたようで、地元・うるま市(沖縄県)が災害時用備蓄としてウォーターピュアを13台、正式採用した。自治体から採用されたのは初めてで、これを機に自治体への営業を本格化させる」
--国内市場への売り込みは「7月6、7日に福岡市のヨットハーバーで、世界最小クラスの海水淡水化装置『オーシャンピュアE-40H』のデモ会を開催した。重量は約20キロで、片手で持ち運べる。また海水を1時間当たり40リットルのおいしい飲み水に変えることができる。といっても実際に装置を見たい、試飲したいという企業、自治体は多い。実感できれば商談に進めるので、今後もデモ会を開催していく」
--海外展開は
「16年度の沖縄県の『県産工業製品海外販路開拓事業』に採択されたので、この助成金を使って海外展示会などに出展していく。国内より海外のほうが引き合いは多い。梱包(こんぽう)事業などを手がけるカネパッケージ(埼玉県入間市)にオーシャンピュアGX-30Hを生産委託することが決まり、4月からフィリピン工場で生産を開始、東南アジア市場を開拓していく。売上高は、来期(17年8月期)に海外が国内を上回りそうだ。また水の地産地消の一環として新事業に進出、事業の柱に育てる考えだ」
--受賞メリットは
「メディアに取り上げられる機会が増えた。今年4月に本社を宜野湾市からうるま市の工業団地に移転したが、ベンチャー企業には難しいといわれた工業団地に入れたのも、県産工業製品海外販路開拓事業に採択されたのも沖縄県が認めてくれたからだ。東京本社も設立できた。3年以内の上場を目指しているが、成長のすべてのきっかけはアワードで大賞を受賞できたから。このアワードはベンチャー企業の登竜門に育ってほしい」
【プロフィル】
柳瀬良奎やなせ・よしふみ
やなせ・よしふみ 同志社大法学部卒。1996年伊藤忠商事入社しブランドビジネスやM&A事業に従事。アクセンチュア、セシールを経て2012年ワイズグローバルビジョンを設立し社長。43歳。京都府出身。
【会社概要】ワイズグローバルビジョン
▽本社=沖縄県うるま市勝連南風原5192-47
▽設立=2012年9月20日▽資本金=2430万円
▽従業員=14人
▽事業内容=水のスモールインフラ構築事業
「フジサンケイビジネスアイ」