執行役員広報室長・浦野ヒロ子氏
--北欧の消防車メーカーを子会社化しました
国内の消防車メーカーは14社で当社のシェアは約57%、2台に1台がモリタ製です。しかし、人口減や各自治体の消防本部数の減少などから今後、業界として右肩上がりの成長は期待できません。このような背景から一昨年12月、フィンランドの消防車メーカー、ブロントスカイリフトを104億円で買収しました。ブロントの主力商品である屈折・伸縮するブーム(搭)を使い、最長112メートルまで延びる屈折はしご付き消防車は世界トップシェアです。北米、アジア、アフリカなど世界100カ国以上に販売網を持っており、当社の消防車も販売していきたいというのがトップの考えです。
--広報活動もグローバル化しています
当社は東西両本社制を採っていますが、大阪発祥の会社なので、通常は大阪のメディアとのお付き合いがメーンになります。海外とのM&A(企業の合併・買収)や、消防車の中国やベトナム、インドなどを中心とした輸出関連情報は足掛かりとしてウェブメディアを使って配信しています。それを契機に、NHKワールドでトップインタビューが実現したり、ABCニュースやCNN、ブルームバーグなどで当社のことが紹介されたり、グローバル広報の成果は徐々に上がってきています。
--ダイバーシティー(多様性)の導入などに積極的です
現在、業績は順調に推移し、2015年3月期の連結売上高も719億円と過去最高益でした。こういう状況下、社員には誇りを持って仕事をしてほしい、また新しいモノを開発していくいい人材を採用したい、その一環として昨年4月、「ダイバーシティ推進室」が発足しました。働き方改革や女性の活躍推進を柱に性別、国籍、年齢などに関係なく、多様な価値観を尊重するとともに、それぞれの能力を最大限に発揮してもらい、社会に貢献していきたいというのがその目的です。
--“社員を起用した広告”はその表れですね
14~16年入社の社員にモデルになってもらい、18年3月卒業の学生をターゲットに、「世界に誇れる技がある、人がいる。」というキャッチコピーの広告を作成しました。兵庫県三田市の三田工場で消防車6台をバックに11人の社員が笑顔で写っている構図です。短時間で消火できる消火薬剤の研究をしている技術系の女性社員などもいます。新聞での広告展開や大学向けのポスターは人事部の社員がキャラバンで各大学に配布しました。優秀な人材に仲間として入ってきてほしい、社員のそんな気持ちが広告となってリクルート面でも生きています。
--「未来の消防車」アイデアコンテストが定着しました
全国の小学生を対象に夢のある「未来の消防車」をテーマとした作品の募集を毎年行っており、毎回1000件近い応募があります。昨年の最優秀賞は「特殊災害工作車」。山梨県の小学3年生男児の作品で、人が簡単に近づけない現場でも放水、人命救助ができるものです。大人向けには「火の用心川柳」コンテストを行っています。昨年は約3500件の応募がありました。どちらもメディアに「募集します」「優秀作品が決まりました」というメッセージを発信しますので、モリタのよいPRに結び付いています。広報室のメンバーは4人で、今後とも地道ながらも大阪→東京→世界に向けた広報を展開していきたいと思っています。(エフシージー総合研究所 山本ヒロ子)
【プロフィル】
浦野ヒロ子 うらの・ひろこ
1968年鹿児島県立川辺高校卒、モリタ(現モリタホールディングス)入社。大阪本社防災営業本部業務課、防災事業本部課長、総務部広報担当などを経て、2003年東京本社広報室新設に伴い初代広報室長。09年から現職。
「フジサンケイビジネスアイ」