サーチファーム・ジャパンの武元康明社長
■シニア層発掘 地方企業戦力に
有能な経営幹部らの転職を橋渡しするヘッドハンティングの国内市場は、外資系の金融機関など一部の分野に限られていた。しかし、1990年代のバブル崩壊で事業環境は一変。企業年金制度や終身雇用制度など、日本型経営スタイルが崩壊したことで、市場は活気を帯びていった。
こうした中、エグゼクティブ層の人材発掘を目的として2003年に設立されたのがサーチファーム・ジャパン(東京都千代田区)。08年のリーマン・ショックなど厳しい局面を迎えた時期もあるが、現在では年間に数百件の契約を成立させている。
人材発掘は、登録型とサーチ型に大きく分かれる。転職を希望して自らの意思で活動する登録型の場合、一定の役職に就いていたり、企業の中核技術に携わったりする人は登録しないため、優秀な人材を見つけにくい側面がある。
これに対してサーチファーム・ジャパンが取り入れているサーチ型は、依頼先の要望にのっとり、さまざまな人脈をたどってアプローチし、最適な人材を探し出す。
欧米と日本では、ヘッドハンティングにかかわる概念が大きく異なる。欧米の場合、転職しても職位に応じた権限が与えられる。
その分、年収も大幅なアップが約束される。一方で日本は、新しい職場での信頼関係が構築されなければ権限委譲も進まないという企業文化。大幅な処遇改善も、さまざまな摩擦が生じる恐れがある。
このためサーチファーム・ジャパンが重視しているのが、処遇改善とやりがいのバランスを保つこと。武元康明社長は「所属している組織で、実力はありながら活躍できていないケースは多い。企業の大小にかかわらず、持てる力を発揮できる企業とのマッチングを行うことがわれわれの役目」と語る。
今後、力を入れていく事業領域のひとつが、地方に本社機能を置く企業の活性化。その一環として社外取締役を紹介する事業に参入した。
ターゲットとなるのは東京を中心とした都市部の人材。社外取締役の経験があり、豊富なノウハウを備えた人材や、法務・会計など専門知識に詳しい人材の紹介が中心となる。12年に100人の紹介を目指す。また、親子間で事業承継を考えている企業に向けては、番頭役を担う人材を送り込む。
事業を円滑に進めるため、地元に根付いた税理士法人や監査法人、コンサルティング会社との業務提携も行う。一連の取り組みを通じ、「シニア層の雇用に寄与していきたい」(武元社長)としている。(伊藤俊祐)
「フジサンケイビジネスアイ」