■近江商人の思想に学ぶ
中堅中小企業には、人間としていかに生きるべきかにまで踏み込み、社員たちや地域社会と向き合う経営者が多い。
滋賀県で包装・産業資材などを取り扱うS社のM会長もその一人であり、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の精神で有名な近江商人の思想の流れをくんだ持論を展開している。以下に、含蓄あふれるM会長の話を紹介したい。
◆お金を使わせない
M会長は「(オーナー型)中小企業と大企業では、経営に対する考え方が根本的に違う」と言う。
まず、お客さまに対しては、中小企業は地域産業・地域社会と密着している。地域の顔の見える個別のお客さまを相手に、「どうしたら、お金を使わせないようにできるか」をビジネスの基本に据える。M会長は「自分たちが暮らす地域社会ではモノを高く買い、大事に長く使おうとする。心の豊かさ、人との絆(きずな)が大切であり、この姿勢を維持できることが幸せと考えている」と言う。
一方、大企業はグローバル経済を前提にものを考えるため、個別のお客さまではなく、市場を相手にビジネスを展開している。安いモノをつくってお客さまにたくさん買わせ、浪費をあおろうと意図することが少なくない。
「お金を使うこと、またそのために、お金をたくさん稼ぐことが人間の幸せにつながるとの考えが根底にある」とM会長は言う。
◆リストラはない
社員に対しては、中小企業は縁あって自社に入ってくれた限られた社員を前提にしているのに対して、大企業の社員は人材が多彩で豊富な労働市場からの採用を前提にしている。したがって、中小企業ではリストラは経営者の頭にないが、大企業ではリストラは当たり前の経営手法だとM会長は指摘する。
ちなみに、M会長が言う中小企業とは、S社のことと思われる。このため、S社は並ではない優れた中小企業であると理解しなければならない。
このように、M会長の揺るぎない経営哲学に裏打ちされたリーダーシップによって、S社では社員が主役となって光り輝き、次々と事業領域を拡大してきた。現在では年商100億円にのぼる。
M会長の持論には大いにうなずける。オーナー型の中堅中小企業は大企業とは全く別物である。
経営者の経営哲学を個性として前面に打ち出すことで、お客さまはもちろん、社員や地域社会との良好な長期的関係の維持を徹底的に追求すれば、いかなる環境変化にも適応し、いつの時代にも必ず生き残れるに違いない。
アタックスグループ
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「フジサンケイビジネスアイ」