ボタン一つでウェブサイトの自動翻訳ができるサービスが注目を集める
■既存サイト利用 精度に自信
外国人の居住者や旅行者が増加し、海外取引を進める企業が増える中、ソフトウエア開発の高電社(大阪市阿倍野区)が提供するホームページ自動翻訳サービス「Myサイト翻訳」の導入が、さまざまな業界に広がっている。
通常、ウェブサイトを外国語で提供したい場合は、別に翻訳してページを作る必要があるが、同社のサービスを利用すれば、既存の日本語サイト上に「英語」「中国語」といった翻訳したい言語のリンクのボタンをのせるだけ。ボタンをクリックすると自動的に翻訳を開始し、リンク先もすべて翻訳する。即時に翻訳する仕組みなので、日々更新するニュースにも対応できる。外国語サイト製作の予算を、年間500万円から30万円程度に削減できた取引先もあるという。
創業者の高基秀・元会長は韓国出身。日本語学習に苦労した経験から、パソコン向け日本語-韓国語の翻訳ソフトを1984年に発売した。当時はパソコンも一般家庭にはあまり普及しておらず需要も少なかった。
ソフトで培った技術をもとにウェブ翻訳サービスを始めたが、自動翻訳では不適切な訳語になることも多く、当初は営業に回ってもなかなか受け入れられなかった。そこで同社は、ウェブ開設者自身が単語や文章の誤訳を自由に更新できる機能を追加。市長のメッセージなど、こだわりのあるページには、独自に翻訳した文章を使うといったカスタマイズを自由にできるようにしたところ導入が進み、現在は82の県庁や市役所、海外に販路を拡大したい企業をはじめ、大学や観光サイトなどにも利用が広がる。プロ野球球団のオリックスバファローズは韓国人選手の入団をきっかけに導入し、また10月には日本に居住する外国人向けにと、不動産情報サイトにも取り入れられた。
同社のサービスが人気を集める理由について「翻訳の精度にはこだわった」と話すのは、ソフトウエア事業部の北田博史部長。適切な翻訳をするために、文法を解析し、言語のルールのプログラミング構築に最も力を入れた。
特に苦労したのは、中国語。「日本語はひらがなと漢字の区別が、英語は単語間にスペースがあったりと単語を認識しやすいが、中国語は区切りがない」といい、学習者とは違う視点で外国語を分析する。
現在力を入れるのは、スマートフォン向けのアプリ開発だ。まずは中国語翻訳の基本技術を他のソフトメーカーに販売、自社でもアプリの開発を進める。
北田さんは「スマートフォンには手書き入力機能や音声認識機能など、翻訳に応用できそうなツールがたくさんある。それらを応用した便利なアプリを提供していきたい」と意気込む。
「フジサンケイビジネスアイ」