松本慶太代表取締役
全国のホテルや旅館にもうかる仕組みを広めたい-。そんな思いでインターネットを活用した宿泊施設向け販売支援サービスを提供しているのがコレリィアンドアトラクト(東京都中央区)だ。ネット集客の成功事例を積み上げ、設立5年後の2014年に5億円の売り上げを狙う。
「閉塞(へいそく)感のある日本の観光業を盛り上げたい」と願うJTB出身の松本慶太氏が、09年5月に設立した宿泊施設専門のウェブマーケティング会社だ。
松本代表取締役は、JTB時代の営業経験を生かしながら、自社ホームページ(HP)で宿泊客を効果的に集める手法を提案。顧客企業数は累計で約50社に達した。11年の売上高は約6300万円を見込む。
実績の一つが、リゾートホテル激戦区の沖縄県にある「ホテル日航アリビラ・ヨミタンリゾート沖縄」(読谷村)の集客力強化。10年3月からサービスを開始した。
アリビラ独自の「強み」と顧客ターゲットを明確化。その上でアリビラ側と吟味し、既存HPを、訪問者を一瞬で引きつけるよう刷新した。その結果、HP経由での宿泊予約数が昨年8月に前年同月比3.27倍という驚異の記録となった。
成功要因は「青い海が一望できる席で美味しい朝食が食べられる」という魅力が、日常生活でゆっくり朝食をとる機会がない若者らの心に響いたことだ。
コレリィはHP制作にとどまらず、集客の検証や改善策立案まで一手に引き受けられる点が売り。その過程で、宿泊が見込める客をつなぎ止める広告や、世界最大の交流サイト「フェイスブック」を通じた宿情報の発信施策なども用意できる。一連の販売支援サービスの価格は1社当たり月5万円から。
ネット集客支援の背景には、既存旅行会社に客室を預けて販売してもらっていたホテル・旅館の意識変化がある。それを象徴する動きが宿泊予約サイトを運営する新興勢力の台頭だ。
観光庁によると、楽天トラベルの10年度の国内旅行取扱額は前年度比15.6%増の2379億円となり、JTB(7092億円)に次ぐ業界2位に躍り出た。
さらに、東日本大震災の影響で旅行のキャンセルが相次いだことを契機に、既存旅行会社に依存する売り方を見つめ直す宿泊施設も増え始めた。
「39年にアジアナンバーワンのウェブマーケティング会社にしたい」。壮大な目標を視野に8月には、フェイスブックで創業100年以上の老舗宿の魅力を伝える事業を立ち上げた。観光業を変革する活動は今後も続く。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」