菅谷保巳氏 すがや・やすみ 東北工大工学部卒。1981年日本補聴器販売(現・ワイデックス)入社。小売り営業、卸営業部門本部長を経てハーモニー補聴器(現・アクティブヒアリング)社長を歴任後、2009年から現職。55歳。茨城県出身
■高品質にこだわり 補聴器需要開拓
補聴器メーカーのワイデックス(東京都墨田区)。離れた場所でもテレビ音声が明確に聞こえるシステムなどをそろえた高級補聴器「クリア」シリーズを投入するなど、商品群の拡充を進めている。海外に比べて、潜在需要がありながら普及が遅れている日本の補聴器市場を活性化するため、商品力だけでなく、独自のウェブサイトの構築などで積極的に情報発信するなど、幅広い視野で事業に取り組む菅谷保巳社長に聞いた。
--補聴器の国内動向は
「聴力が低下している人は日本人の15.43%に相当する2000万人ほどいるとされるが、日本補聴器販売店協会の調べで2010年の販売台数は約48万台にとどまり、日本は普及率の面で後れている状況だ」
--そうした中で商品の差別化が難しくなっている
「あらゆる環境下でも明確に聞こえる高品質商品にこだわりたい。そのためにカウンセリングや機器調整力の高い専門店が必要で、教育も徹底していく」
--独自色の強い高級品を投入した
「独自の伝送方式を採用し、離れた場所でもテレビの音などが遅れることなく補聴器に明瞭に伝わる『クリア』シリーズを発売した。携帯電話の音も補聴器を装着したままではっきり聞こえるなどの特徴を持たせた」
--東日本大震災の影響は
「被災地での補聴器に対する意識は大きく変わった。防災無線を聞き取ることが必要などの理由から、子供が離れて暮らす高齢の親に購入するといったケースも増えている。9月からキャンペーンを実施し、補聴器の必要性を訴求していきたい」
情報発信にも力を入れている
「実際に補聴器を購入するまでには7年かかるとも言われている。健常者のためにも補聴器に関する正しい情報提供が必要だ。その一つの取り組みとして独自のウェブサイト『みみから。』を運営している。2010年2月の開設当初と比べ、現在は約40倍のアクセスがある」
--今後の事業計画は
「独自色のある中級機から高性能の最高級機の訴求を強化する一方で、今秋にかけて20万円以下の買い求めやすい商品も投入し、一層の普及に努める。こうした取り組みにより、足元で年間5万台程度の販売実績を、5年後には7万台程度まで引き上げたい」(那須慎一)
【会社概要】
代表取締役:菅谷保巳氏
所在地:東京都墨田区堤通1の19の9 リバーサイド隅田セントラルタワー
資本金 1億1700万円
従業員数 120人
事業内容 補聴器の製造、販売