1時間当たり250リットルの海水を浄水にするガソリン・ディーゼル駆動小型海水淡水化装置
人口増加に加え、温暖化による天候不順などで水資源不足が地球規模で深刻化、中でも安全な飲料水の確保が喫緊の課題となっている。この解決に向け、飲用水の製造装置を製造・販売するワイズグローバルビジョン(沖縄県うるま市)は、小型海水淡水化装置で浄化された水の販売事業で海外市場開拓に乗り出した。柳瀬良奎社長は「これからは水の地産地消が求められる。水のスモールインフラを提供する」と強調する。
◆海水や泥水を浄化
--水販売事業とは
「日本の高い水道法基準をクリアした水を供給できる装置を販売してきたが、『MYZ(水)プロジェクト』と呼ぶ水販売事業を新たに始めた。水道インフラ整備が進まず、水質環境も悪い東南アジアの島々が当面のターゲットになる。ガソリン・ディーゼルエンジンで稼働するため電気が通っていなくても1時間に250リットルの安全な浄水を供給できる。ペットボトルなどに入った水を買うのではなく、目の前にある海水や泥水を自ら浄化して飲料水として使うことに意義がある」
--すでに海水淡水化装置として大規模プラントが稼働している
「大規模プラントは海水を濾過(ろか)するために膨大な電気エネルギーを消費しコストがかかるほか、末端の家庭までなかなか浄水が行き渡らない。われわれは水のスモールインフラを提供するので、世界中の水問題を個人レベル・家庭レベルで解決できる」
--プロジェクトは進んでいるのか
「国際協力機構(JICA)の2016年度案件化調査事業に採択されパプアニューギニアで実施しているほか、フィリピンでもバナコン島で実証実験が昨秋にスタートした。今はデータを取得中で、離島ではガソリン代が高いのでディーゼルに切り替えたほうがいいとか、販売した浄水の代金回収をだれに任せればいいかといった課題を見つけた。今後の本格展開に生かす。離島の多いインドネシアでも事業化に向けて動き出す」
◆今夏にも1号機設置
--具体的には
「JPモルガンの協賛のもと、一般社団法人コペルニク・ジャパンから今年2月、MYZプロジェクトがアジアでの需要創出が見込めると選定された。これを受けインドネシアに進出する。バリ島バン村、ズンバ島ウンガ村に市場調査に行って現地ニーズを把握、事業展開のイメージを固めた。ここを候補地に1号機を今夏にも設置する予定だ。代金回収パートナーなどを決めて1リットル当たり3円で提供し年間270万円の収入を見込む。1号機で持続可能なオペレーションを確認してから年内にも2号機を設置したい」
--設備投資に必要な資金面の手当ては
「経営資源のうち、ヒトはコペルニクなどとの連携、モノは海水淡水化装置をもつが、カネに不安がある。そこで環境ビジネスを支援する九州経済産業局の九州環境エネルギー産業推進機構(K-RIP)から6月30日、『インドネシアにおける海水淡水化装置を活用した事業の可能性調査』がプロジェクトとして採択され、助成金を得た。水の地産地消を推進する事業としてようやく認められるようになったので、これから積極的に海外展開し、5年後には100機強を設置し、水販売ビジネスで10億円の売り上げを目指す」(松岡健夫)
【プロフィル】
柳瀬良奎 やなせ・よしふみ
同志社大卒。1996年伊藤忠商事入社。アクセンチュア、セシールを経て2012年ワイズグローバルビジョン設立し社長。44歳。京都府出身。
「フジサンケイビジネスアイ」