埼玉縣信用金庫 橋本義昭理事長
埼玉縣信用金庫は、取引先中小企業などの経営課題を解決するためコンサルティング機能を強化するとともに産学官連携に注力。その一環として、2006年3月に立ち上げた任意団体「コラボ産学官埼玉支部」を昨年5月に一般社団法人「さいしんコラボ産学官」として新たにスタートさせた。企業と大学、行政がもつニーズとシーズをマッチングさせる橋渡し役を一層強化しながら、中小企業の事業発展を支援する。橋本義昭理事長は「地域密着型金融がわれわれの事業であり使命。地元産業の活性化を手伝う」と意欲を見せる。
--さいしんコラボを設立した理由は
「さいしんコラボは地域企業と国・地方自治体などの連携を推進する支援機関。これまでも顧客ニーズに応え地域産業の活性化に貢献してきたが、節目の10年を迎えたのを機に改めて中小企業支援という原点に回帰。さいしんコラボとともに、産・学・官のニーズとシーズをくっつけて地元中小企業の育成、埼玉県の発展に貢献する」
--中小企業が抱える課題解決への取り組みは
「顧客の課題を聞いて解決につなげることが重要。しかし技術力が優れているかどうかをわれわれが判断するのは難しい。そこで技術革新や技術力向上、大学・研究機関などとの共同研究といった課題を解決する『技術課題相談会』を開催し、技術士や専門家からアドバイスを受ける機会を提供。また『経営課題相談会』を実施、経営効率の改善や組織の見直し、人材確保・育成などについて中小企業診断士などが対応している。こうした課題解決に向け、さいしんコラボと連携して取り組み、中小企業を支援していく」
--さいしんコラボに生まれ変わった効果は
「現在の会員数は約560。以前は取引先ばかりだったが、今では融資実績がなくても『大学などとコラボレーションできる』といって、さいしんコラボの会員になった企業と取引が始まるケースもある。支店長も気づき、コラボ会員の悩みを聞いて課題解決に貢献して融資につなげるという支店も出てきた」
--開放特許の活用は
「さいしんコラボは特許庁委託事業『地方創生のための事業プロデューサー派遣事業』のプロデューサー派遣先機関に採択された。派遣されたのは、埼玉県創業・ベンチャー支援センター元所長の鈴木康之氏。中小企業が開放特許を活用して新商品を開発し、自治体など支援機関が事業化をサポートする『埼玉モデル』を確立した経歴の持ち主。開放特許を活用し、商品化に向けて試験中のものもあり、感触はいい。ただ商品を完成させるまでは時間も掛かり、簡単なことではない」
--6月7日に「さいしんビジネスフェア2017」を開催する
「2年前に初めて単独開催したビジネスマッチングイベントで、今回が2回目。前回は1万5000人が来場し、商談件数は約1600、出展者満足度は91.5%と高い評価を得た。特に出展企業の社長がブースを離れるとき、支店長が代わりに対応できるようにしたのが大変喜ばれた。今回は約250社が出展する。次の融資につながるビジネスチャンスととらえている」
--地域金融機関が勝ち残るために必要なことは
「われわれが大事にしたいのはよろず相談。何かあったときに真っ先に相談される金融機関にならないと衰退しかないと思っている。取り組んできたリレーションシップバンキングや地域密着型金融の実践で地域貢献していく」
【プロフィル】
橋本義昭 はしもと・よしあき
明治大法学部卒。1976年埼玉縣信用金庫入庫。2006年理事、常務理事、専務理事を経て、15年6月から理事長。63歳。埼玉県出身。
【金庫概要】埼玉縣信用金庫
▽本店=埼玉県熊谷市久下4-141
▽預金積金=2兆5890億円
▽貸出金=1兆5189億円
▽設立=1948年2月1日
▽常勤役職員数=1794人
▽営業地域=埼玉県全域と東京都・千葉県・茨城県・群馬県の一部
「フジサンケイビジネスアイ」