エルテス・菅原貴弘社長
ツイッターやフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)が社会に浸透したことで、口コミや個人が撮影した動画などさまざまな情報がインターネット上にさらされている。内容によっては企業にとって風評被害につながることもあり、リスク対策は業界を問わず大きな関心事だ。ネット上のリスク解決を手掛けるエルテスの菅原貴弘社長は「リスク解析専業会社として、社会インフラになる」ことを目指す。
--いまの事業にたどり着くまでの経緯は
「大学在学中の2004年に起業した。当初はさまざまな領域のITサービスを手掛けたが、その後数年のうちに国内ではグリーやミクシィ、米国ではフェイスブックといったSNSが急速に普及した。それに伴って名前や写真、交友関係などの個人情報が暴かれる被害が深刻になった。犯罪に結び付くことも心配され、社会的に大きなニーズがあると考え07年からリスク解決の事業に特化した」
--顧客はどの業界が多いか
「多岐にわたるが外食、食品関係が多い。数年前に大手食品会社のカップ麺への異物混入やファストフード店のアルバイトによる悪ふざけのSNS投稿が発端となって、大きな社会問題になった。閉店に追い込まれた店舗もあって外食・食品業界には衝撃が大きく、以前にも増してネット対策が注目されるようになった」
--具体的にどのような方法でリスクを判定するのか
「顧客の風評被害やイメージダウンにつながるSNSなどへの投稿をアナリストが監視している。IT技術や人工知能(AI)を駆使するが、最終的な判断は必ず人間が行う。リスクを検知した場合は事後の対応をアドバイスして解決を図る。現在約30人のアナリストが24時間365日対応している」
--企業でコンプライアンス(法令順守)の重要性が高まっている
「企業の情報漏洩(ろうえい)は管理ミスや故意の情報持ち出しなど内部要因が8割を超えるため、予兆を捉えて未然に防いでいる。ログデータを基に、重要文書へのアクセス履歴、印刷記録などを調べて行動パターンを解析し、顧客企業に危険な兆候を報告して対応方針を提案する。16年から始めた独自のサービスで、技術力やノウハウの蓄積が生かされている」
--11月に東証マザーズに上場した
「SNSによる企業の風評被害が広がっている割に当社の認知度は低い。知名度を上げ信用度を強めることで、新たな顧客を開拓する狙いがあった。上場後は問い合わせが増え、それに比例して受注も好調だ」
--今後の展望は
「ネットの炎上や情報漏洩を防ぐことはもちろん、金融犯罪、テロ対策へも事業領域を広げていく。幅広い領域でノウハウを活用することでリスク解析の精度が高まり、よりサービスレベルを上げることができる。過去5年間で売上高を年平均40%以上伸ばしてきたが、さらに成長を加速させたい」
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【プロフィル】
菅原貴弘すがわら・たかひろ 東大経中退。2004年旧エルテスを設立し、社長就任。14年旧エルテスを吸収合併し、エルテスを設立し、現職。37歳。岩手県出身。
【会社概要】エルテス
▽本社=東京都港区新橋5-14-10 新橋スクエアビル5階
▽創立=2004年4月
▽資本金=6億2840万円
▽従業員=78人(16年11月時点)
▽売上高=13億6900万円(17年2月期予想)
▽事業内容=ネット上のリスク検知に特化したビッグデータ解析によるソリューション提供
「フジサンケイビジネスアイ」