三谷聖一社長
生産数量が少なく、米国愛好家の間で「幻のワイン」と呼ばれているカリフォルニアの希少ワイン「Vマドロン」が、米国以外では日本でだけ飲める。実現させたのがTYクリエイションだ。2012年、生産者から世界で唯一、米国からの輸出を認められた。三谷聖一社長の「運が良かっただけ」という言葉には生産者、商品、消費者への深い敬意がにじむ。
--「Vマドロン」の日本への輸入実現は、ワイン好きの間で話題になった
「ワインの名産地として知られる米カリフォルニア州ナパバレーで生産されている。数量が年間2000ケースと限られ、米国でもトップクラスのレストランか、限られた愛好家の間でしか流通していない。それを直接、オーナーと交渉し、現在、年間150から200ケースを輸入している」
--Vマドロンの魅力は
「味わったとき、初めて納得するワインと出合った感動を覚えた。味わい深く、主張が強過ぎず、食事とともに味わえる。日本の消費者の好みにも合う」
--生産者のワインに対する思いも重要だと聞く
「もちろんだ。生産者であるティリーご夫妻のワインに対する敬虔(けいけん)で真摯(しんし)な姿勢は欠かせない魅力だ。ご夫妻は現地で荒廃したワイナリーを買い取ってから、土壌、苗木、生育方法など全てに妥協せずに造っている。使うブドウも100%自社生産するカベルネソーヴィニオンや、契約農家から購入したもの、平均樹齢90年以上の古木から取れるものなどで、その姿勢には敬意を払う以外にない」
--日本への輸出が認められた理由は
「運が良かっただけ。初めてご夫妻と面会したときに、自分がVマドロンをどれだけ好きか、どれだけ日本の消費者に届けたいか、という思いを率直に伝えた。それで気に入っていただけたのだろう。現在、ワインは100種類以上を扱っているが、どれも自分が納得し、消費者に自信をもって伝えられるものだ。ワイン以外でも、ドミニカ共和国の特定の一つの区画からとれるシングルエステートコーヒー豆、『アタベイコーヒー』を販売している」
--以前は会社員だった
「ほぼ一貫してお酒関連の会社で働いてきた。大卒後はサントリー。貿易部門に配属され米アンハイザー・ブッシュの『バドワイザー』を扱っていた。4年後にキリンビールと合弁会社を設立することになり、そちらに転職した。その後、フランスのペルノ・リカールでマーケティング、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンでワインとシャンパンの営業と、常にレベルの高い仕事が与えられたのは運が良かった。経緯があって今の会社を設立してからも役立っている。日本では、和食店にワインの入る余地がまだまだ多いなど市場は有望だ。これからも消費者の声に耳を傾け、ワインを広げていきたい」
【プロフィル】
三谷聖一みたに・せいいち 上智大外国語(現・国際教養)卒、1991年、サントリー入社、バドワイザー・ジャパン、ペルノ・リカール・ジャパン、LVMHヴーヴクリコジャパン営業本部長を経て、2005年TYクリエイションを設立し、現職。49歳。東京都出身。
【会社概要】TYクリエイション
▽本社=東京都武蔵野市吉祥寺本町2-10-12
▽設立=2005年1月
▽社員=12人
▽資本金=1000万円
▽売上高=約4億円
▽事業内容=ワイン、コーヒー、天然石などの輸入販売業、エンターテインメント関連事業
「フジサンケイビジネスアイ」