プラント設計会社のフィリピン人女性エンジニア。就労ビザ取得と日本での生活全般を、企業総務とともにサポートしている
日本の人口が減少する中、政府は「高度人材」と呼ばれる専門知識を持った外国人を呼び寄せて、中長期的な成長につなげる戦略を描いている。40年以上にわたり得意の英語を駆使して、貿易事務、米研究機関日本支社の役員秘書、外国人採用、外国人社員の生活サポートなどのキャリアを積み重ねてきたのがアットコンシェルの立木晶子代表。「英語を使いながらビジネス経験を生かし生涯現役を貫く」と意欲的に事業に取り組んでいる。
アットコンシェル・立木晶子代表
主に中小企業を顧客として、フィリピン人に特化したエンジニアなどの技術系人材の採用、日本での生活サポートを手掛けている。採用難の中小企業にとって外国の高度人材は魅力的だが、採用ルート、ノウハウもなければ、滞在中のサポートも十分に行き届かない。立木代表は採用から日本での生活全般まで、自らの経験を生かしてワンストップでサービスを提供する。
◆濃密な信頼関係築く
採用については各社の要望を踏まえ、現地で提携する人材会社から紹介を受けて推薦する。履歴書と電話、メールといった書類と通信手段のみで、依頼された会社にふさわしい人物か判断する。日本の会社と相性のいい人物について「履歴書の限られたスペースに、記載内容が分かりやすくまとめられ、電話面談では自分の要望だけでなく、こちらの話をしっかり聞いていることが重要」と選考基準について語る。
採用後には就労ビザ取得、住宅の契約、役所の届け出に付き添うほか、「子供が病気になった」「家族を呼び寄せたい」といった日本での生活全般をきめ細かくサポートする。日本で働く外国人にとって、手厚い生活支援は重要な要素となっている。日本での生活への不安から就労を断念して途中帰国することもあるからだ。
不慣れな日本での生活を支援することで、濃密な信頼関係が築かれる。契約期間が終わって帰国したあともフェイスブックで交流が続く人がいるほか、「現地に出張したとき同行して手伝ってくれる人や、日本で働きたい知人を紹介してくれることもある」と次の仕事にも結び付いている。
これまで40カ国・地域の人と関わってきたが、フィリピンを「アジアでこれから最も期待できる」と高く評価している。英語が公用語であることと、ここ数年5~7%の経済成長を遂げているほかに、「アジアでありながらラテン的な陽気な人が多い。職場でも円滑な人間関係をつくるのに役立っている」という。
◆介護人材事業進出へ
得意だった英語を使った仕事をしようと、英語専門学校を卒業後、東武鉄道の特急電車の車掌通訳になった。その後、貿易会社勤務を経て結婚・出産で1年半を専業主婦として過ごす。のちに転職を重ねて貿易事務、秘書、外国人採用、外国人生活支援などのキャリアを積む。「積み重ねた経験を次世代に還元しよう」と、定年後の2013年1月に62歳で起業した。
今後は高度人材だけでなく、深刻な人材不足に悩まされている介護人材事業にも乗り出す。「明るくて世話好きなフィリピン人は介護人材に適任」と期待を込める。すでにリサーチを始めていて11月には現地を視察する。さらに技能実習生事業にも着手する。「フィリピンの若者に日本で技能を習得してもらい、帰国して祖国のために貢献してもらいたい」。日本とフィリピンの架け橋として、両国の発展に尽くす。
【プロフィル】
立木晶子たちき・しょうこ 放送大教養卒。1969年、東武トラベル入社。貿易会社、米国研究機関日本支社、外資系エンジニアリングなどでキャリアを積む。2013年1月アットコンシェルを設立し現職。65歳。千葉県出身。
「フジサンケイビジネスアイ」
◇【組織概要】アットコンシェル
▽所在地=東京都江東区東陽7-4-11
▽設立=2013年1月
▽事業内容=就労ビザ取得支援、外国人材紹介、就労支援、翻訳・通訳など
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