サーキュレーション 執行役員 福田悠
文化財に関する事業を官民で展開するナカシャクリエイテブ(名古屋市天白区)では、文化財の知見を生かした新規事業開発に外部人材を活用している。新たに開発を進めているのは、外国人観光客向けに地域の特徴や特産、文化財などを調べられるサービスやメディアだ。
文化財の調査や整理、アーカイブ化などを官公庁や教育・研究機関から受託し、事業の柱としてきた同社。この新規事業は、長年にわたり蓄積した文化財の知識を活用したものだ。同社でこの事業を推進する坂本範基さんは「自治体からの受託だけに頼らず、独自事業を展開したいと考えていた」と話す。地方創生関連の予算によって発生する自治体からの発注では、蓄積した情報をどのように活用するか、どのような成果をアウトプットするかといったことは、あまり強く求められてこなかった。一方、ここ数年のインバウンド振興政策により、「観光資源として文化財をもっと活用しよう」という機運も盛り上がっている。自治体からの依頼に、より高いレベルで応え、外国人観光客にも今以上に日本を満喫してほしい。そんな思いを込めた事業だ。
しかし、社内の力だけで新規事業を進めていく難しさもあった。アプリ自体の事業実績はあるものの、外国人にも受け入れられる設計とはどういったものか、マーケティングをどのようにして進めていくかといった、社内にはない知見も必要とされていたのだ。そこで同社では外部人材を活用した。求めるのは、新しいビジネスを立ち上げ、実際に収益を生んでいくこと。
そこで、大手製造業でマーケティングを経験した後に起業し、アプリ開発を中心とした新規事業に数多く関わる富井大輔さん(41)を迎えた。コンサルタントとして机上でアドバイスをするだけでなく、自身の経験を軸にして現場を動かしていける専門家だ。週1回、同社の名古屋本社や東京オフィスに顔を出し、事業開発に関わっている。
現在は富井さんを交えて、新しいソリューションの考え方などが活発に議論されているという。プロジェクトメンバーには、日本の歴史や観光地が大好きな若手の中国人社員も加わり、よりユーザーに近い目線でサービス開発が進む。現状は単一のプロジェクトだが、こうした新たな動きは今後、同社内の他部門にも影響を与えていくかもしれない。インバウンド需要の取り込みは、日本各地で対応が求められている課題。最新の成功事例が同社から発信される日も近そうだ。
【プロフィル】
福田悠ふくだ・ゆう サーキュレーション執行役員、シニアコンサルタント。1982年生まれ。中央大学理工学部を卒業後、総合人材サービス大手を経て、2014年サーキュレーション創業に参画。現在は、数々の企業とのアライアンスを手がけながら、製造業チームのマネージャーとして、地方を含む中小企業の経営支援に従事。
「フジサンケイビジネスアイ」