サーキュレーション 代表取締役 久保田雅俊氏
今、日本社会では「働き方革命」が確実に進んでいる。これは地方企業が生き残り、発展していく上で追い風になるはずだ。その背景には、4つのポイントがある。
まずは「シニアの活躍」。60年前と今では60歳を取り巻く環境が大きく異なる。「老後」は遠い。シニアになってもバリバリ働ける人が多い状況に対し、60歳や65歳で定年を迎えるというシステムは完全に時代遅れとなりつつある。
2つ目は「グローバリゼーションの進展」。24時間365日、世界中の市場が眠らずに動いている一方で、日本における働き方はいまだに「午前9時から午後6時」が常識となっている。グローバル市場に合わせて、働き方や雇用形態に柔軟性をもたせていく必要があるだろう。
3つ目は「産業構造の変化」。国内では製造業が縮小し、ICTなどの新しいサービス産業に労働人口を移していく必要に迫られている。求められているスキル・経験が全く異なる市場間の転職は難しく、IoTのような新市場を開拓していく際にも雇用だけでは必要な人材を集めることが難しい、だからこそ働き方そのものの常識を見直していく必要がある。
最後に、社会全体の「働き方の変化への期待」。女性やシニアの活躍推進、ダイバーシティ経営など、企業が新しい働き方を推進することに対しての期待が高まっている。こうした動きが、日本の「働き方革命」を後押ししている。海外に目を向けると、米国では「多様な働き方」に対しての考え方が非常に進んでいる。
2015年9月に実施された労働実態調査「Freelancing in America」(Upwork、the Freelancer’s Union)によると、米国では労働人口の34%に当たる5370万人が、フリーランスとして働いている。若くして独立する人も多く、フリーランスが当たり前の働き方になっているのだ。日本に押し寄せている「働き方革命」の波は、今後米国のような考え方を一般的にしていく可能性もある。
過去の日本では「40年で1社に勤め上げ出世していく」ことが常識だった。今は「40年で3回転職する」に、さらにこれからは、時間や場所や雇用形態にとらわれず「同時に3社で働く」ことも当たり前になっていくはず。だからこそ、地方企業にも優秀な人材を呼び込むチャンスがある。
働く側は「東京か地方か」という選択肢にとらわれず、さまざまな企業に貢献することで職能を伸ばし、キャリアアップを実現できる。「働き方革命」がもたらす未来は、新しい希望につながっていくと考えている。
◇【プロフィル】
久保田雅俊くぼた・まさとし
サーキュレーション代表取締役。1982年生まれ。総合人材サービス大手を経て2014年にサーキュレーションを設立。設立2年半で、国内最大規模となる1万人の独立専門家ネットワークを構築、経営支援実績1000件を突破。15年、「北尾賞」を受賞。オープン・イノベーションコンサルタントとして講演多数。