サーキュレーション 代表取締役 久保田雅俊氏
「東京一極集中」は、地方創生のメイン課題。内閣府は、若年人材が毎年10万人規模で東京に流出しているというデータを出している(2013年の1都3県への転入超過数は、15~29歳の若年層で9.8万人 内閣府資料)。国が流入ではなく、「流出」と表現している点が興味深い。地方の視点で考えたときの、東京一極集中に対する危機感の表れなのだろう。
要因として考えられるのは現金給与額の格差だ。平均年収ベースで東京は約600万円だが、最下位の都道府県では約350万円(15年の東京都の平均年収は623万5000円、最下位の沖縄県は同355万6000円 厚生労働省15年賃金構造基本統計調査)。都会と地方における実際の生活費の差額以上に、大きな格差が生じていると考えられる。東京一極集中は、当然の流れだといえるのかもしれない。
この問題を解決するために最も重視されるべきは「仕事と人の好循環を作る」こと。地方に雇用を創出し、新しい人の流れを作る。そして長期的には、若い世代の結婚・出産につなげ、少子化を解決する。シンプルに考えれば、「地方を元気にすること」が地方創生であり、それはつまり「雇用を創生する」ということなのだ。
では、雇用を創生するには何をすればよいのだろうか?
日本企業の99%が中小企業。地方の雇用の担い手も中小企業だ。とにかく中小企業の経営を支援し、元気にしないことには何も始まらない。そのためには、何よりもまず、社長を支える優れた経営人材が欠かせないだろう。
中小企業の経営に必要な人材を集めようというテーマは、政府の重要施策としても打ち出されている。しかし現実には、東京で活躍する人材が地方の中小企業に興味を持つケースは非常に少ない。
通常、地方への転職は移住を伴うが、東京での仕事に満足している人材に移住を促し、応じてもらえる可能性は極めて低いからだ。
そこで私は、新たな働き方を提案してこの問題を解決したい。つまり、雇用ではなく、非常勤の外部パートナーとして、地方の中小企業へ経営参画してもらうのだ。常駐するわけではないので、必ずしも移住を必要としない。企業側は、求める経験や知見を持つプロ人材を、必要なときだけ活用できる。
一つの企業に縛られず、複数企業を横断して新たな働き方を実践するプロ人材は、確実に増え続けている。この分野に特化した当社のサービスが伸びているのはその証左だ。働き方の新潮流が、地方創生を後押しする鍵となりつつある。
【プロフィル】
久保田雅俊くぼた・まさとし
サーキュレーション代表取締役。1982年生まれ。総合人材サービス大手を経て2014年にサーキュレーションを設立。設立2年半で、国内最大規模となる1万人の独立専門家ネットワークを構築、経営支援実績1000件を突破。15年、「北尾賞」を受賞。オープン・イノベーションコンサルタントとして講演多数。
「フジサンケイビジネスアイ」