「宝石の王様」と呼ばれるダイヤモンドは、天然の物質の中で最も硬く、熱伝導が最も高いことから工業用でもニーズが高い。産業技術総合研究所(産総研)発ベンチャー、イーディーピー(大阪府豊中市)は人工ダイヤモンドの製造を手掛けている。藤森直治社長は30年以上も研究開発に取り組み、難しいとされてきた大量生産に挑み、普及を目指す。
--事業は
「ダイヤモンドは炭素の同素体で、光や電磁波の透過性、化学的な安定性にも優れた特別な物質だ。切削工具、半導体など幅広い応用が期待されるが、産出量が少なくて工業用に使用するには高価だった。19世紀後半から人工ダイヤモンドの製造が試みられるようになり、1950年代に米国で世界で初めてその方法が発明された。私自身、素材メーカーに勤めていた30年以上前から研究しており、高品質な人工ダイヤモンドの量産を可能にして、工業用に普及させるため起業した」
--人工ダイヤモンドの製造方法は
「最初に発明されたのは、高温高圧下で炭素をダイヤモンドに変える『超高圧法』だ。米国で60年代、爆発の衝撃を利用する『爆発法』も編み出された。日本では81年、『気相(きそう)合成法』が発明された。低圧のメタンガスをプラズマ状態で反応させて基板上に堆積させる方法で、従来は粒子状の結晶しか作れなかったのに比べ、板状の結晶が作れるので画期的だ。当社はこの技術を用いている」
--どのように量産するのか
「工業用として普及するには低コストで大量生産ができることが必要不可欠だ。例えば半導体のウエハーを作るとしたら、結晶が大きければ大きいほど、たくさんのウエハーができる。産総研で結晶合成の元になる「種結晶」を大きくする技術を開発し、それを活用して結晶の大型化を可能にした」
--将来性は
「人工ダイヤモンドは既に生活に浸透している。最近では、米アップルのスマートフォン『iPhone(アイフォーン)5』シリーズで、アルミ製の本体の角を人工ダイヤモンドを使った工具で磨いている。キラリと光ることにこだわったらしい。装飾用も高品質の商品が流通している」
--5月11日、大阪府茨木市に第2工場をオープンさせた
「いままで一部の工程で産総研の装置を使用していたが、新工場に装置を配置したことで全工程を自社で手掛けることができる。製造業は、設備投資して生産能力を確保しなければ取引先は見つからず、資金調達が課題だ。この日本発の技術が世間で役立てるようにするために、いろいろな事業を手掛けて生き残っていきたい」(栗井裕美子)
【プロフィル】藤森直治
ふじもり・なおじ 東京大大学院の修士課程を修了後、素材メーカーに勤務し、人工ダイヤモンドの研究に取り組む。2003年、産業技術総合研究所ダイヤモンド研究センター長に就任し、在職中の09年、イーディーピーを設立した。65歳。名古屋市出身。
【会社概要】イーディーピー
▽本社=大阪府豊中市上新田4-6-3
▽設立=2009年9月
▽資本金=4億6250万円(2015年4月現在)
▽従業員=23人(パート含む、2015年4月現在)
▽事業内容=人工ダイヤモンドの開発、製造、販売
「フジサンケイビジネスアイ」