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青森県IT企業誘致「暮らし優先 青森で新生活スタートを」

今後の人口減少が見込まれている青森県が、IT企業の誘致に力を入れている。

どんな場所でも働けるIT企業を取り込むことで、IT事業者へのサテライトオフィス開設や青森県での創業などを促進し、定住者と雇用の増加につなげるのが狙いだ。IT企業従事者のUIJターンにも積極的に取り組んでおり、2015年度からIT企業経営者やクリエーターなどを対象に「青森ITワーク調査モニターツアー」を始めた。青森県で仕事する魅力とは―。

青森県商工労働部新産業創造課の羽原(はばら)健雄課長と青森県でUターン起業したITコンサルティング会社、コンシス(青森県弘前市)の大浦雅勝社長が語り合った。

地方の事業はコミュニティーが鍵

青森県商工労働部 新産業創造課 課長 羽原 健雄氏 青森県商工労働部 新産業創造課 課長
羽原 健雄氏

羽原青森県出身で東京などの大都市圏で働いている人の中には、奥さんの出産や親の介護などを理由に、青森に帰って仕事をしようと考えている方は少なくないです。県ではそうしたUターン希望者をはじめ、青森県にゆかりのない人でも地方で働くことに興味を持つ人向けに、2週間程度の日程で実際に働きながら青森県を理解してもらうモニターツアーを企画し、IT企業の誘致や新規創業支援などを行っています。

大浦社長は2009年に青森県で起業しましたが、その経緯とはどういうものだったのですか。

大浦私は青森県出身で、実は22歳の時にUターンでインターネット関連企業を立ち上げました。

しかし、その時は資金問題や人脈不足などでうまくいかず、一度、東京に戻って30歳で2度目のUターン、そして、6年後の09年に会社を創業しました。地方で事業をしていくにはコミュニティーが重要だということが、最初の失敗でわかりました。 資金よりも人脈が一番重要だということです。

2度目の起業時はネットワークを広げることに注力しようと、Uターンして6年は、IT企業に入社して経験と人脈づくりを精力的に行いました。Uターンと起業を一緒に進めていくのは非常に厳しいため、ある程度の人脈を構築してから起業したわけです。

コンシス 代表取締役 大浦 雅勝氏 コンシス 代表取締役
大浦 雅勝氏

羽原農林水産業や観光業の人たちとも人脈を築いているようですね。

大浦ITを活用して青森県の基幹産業である農林水産業や観光業関連も手掛けていきたいと思っていますので、現在の人脈はIT系よりも農林水産業や観光業の方が多いですね。

羽原IT企業の誘致は多くの地方自治体で力を入れていますが、一部を除けば政策に大きな違いはありません。それよりもIT企業が重視しているのは、大浦社長がおっしゃるように人のつながりだと思います。

また、Uターンで働くメリットは、ゆとりのある人生が送れることです。

青森県は通勤時間が短いことや低価格で広い家に住めるなど、豊かな働き方や生き方を実現できます。東京で「働き方改革」を進めるより青森の方が豊かな生活を送れると思うのですが。

大浦東京のビジネスマンは皆と同じように忙しいことが安心感につながる人もいるようですが、半面で満員電車に乗っていることを冷静に考えると“会社をやめよう”と思うらしいです。

青森は通勤時間が短く、空いた時間を地域コミュニティーに利用できます。今では東京まで新幹線で約3時間なので必要なときに上京すれば事足りますね。

羽原大浦社長以外にも、東京で働いてさまざまなつながりを構築したうえで、青森にUターンして創業したIT系企業がいくつかありますよ。

大浦Uターンで一番良いのが、都市部での仕事をそのまま持ってきて起業するパターン。もう一つが、首都圏などの企業に所属して住居が青森というケースです。地方で生活する場合、仕事とコミュニティーの2つが重要ですが、青森県はすでにコミュニティーが整っているので仕事があれば何も心配はいりません。

羽原仕事上のコミュニティーや横のつながりは他県よりも強いと感じています。

大浦そう思います。ITに関しては、これほど地方でネットワーク化されているところはないと思いますね。

IT産業をサポートする「あおもりIT活用サポートセンター」というNPO(非営利団体)があります。これは官民連携の好事例で、新産業創造課の事業をNPOが引き継いで続いているものです。現在は、このNPOを活用してIT系イベントを開催しており、ネットワークの拡大につながっています。

羽原どちらかといえば県は旗振り役になって何か進めるというよりも、目的意識を持った企業がやりたいことをサポートするということで、かなり自由度を持って進めています。

大浦他県の予算は比較的がんじがらめのようですが、青森県は使いやすい予算名目になっていますね。現在、県の予算で書籍の電子化事業に取り組んでいますが、主婦にやり方を覚えてもらって仕事を進めています。土地柄、仕事の種類は多くないですが、こういう事業が新しい仕事を生み出していますよね。

羽原県としてはさまざまなサポートを実施していますが、実際にUターンで起業してみて何か要望はありますか。

大浦情報を発信するコミュニティー拠点が県庁所在地の青森市にもあった方がいいと思っており、現在、コミュニティー活動、テレワーク活動が可能な拠点を開設する方向で県と連携しています。

UIJターンに向けては、もう少し交流の場を増やした方が良いと思うし、そのためには空港や新幹線の駅に近い市街地に拠点をつくるべきだと思います。

羽原 健雄氏と大浦 雅勝氏

羽原そうですね。県としては、これからも大浦社長をはじめ、現場の方のご意見を参考にしながらさまざまなサポートをしていきます。「働き方改革」が大きな注目を集めていても、なかなかその一歩が踏み出せない人は、ぜひ一度、ノックをしていただきたいです。

大浦青森県は支援制度も多いので、あとはタイミングだと思います。地元は人材不足ですので、Uターンや青森県で働きたい人とのマッチングがうまくいけば良いと思っていますし、そのためにも積極的に相談してもらいたいですね。

青森の魅力を発見する「青森ITワーク調査モニターツアー」

青森ITワーク調査モニターツアー

青森県は、都市部IT事業者の青森県へのサテライトオフィス開設に加え、コワーキングスペースなどの活用による短期・長期滞在者、定住者を増やすための「青森ITワーク調査モニターツアー」を、2015年度にスタートした。

青森で短期間「暮らすように働く」体験をしてもらい、サテライトオフィスの進出可能性や個人事業者の定住可能性、住環境の魅力などについてアンケートを提出する。

参加条件は、
① 指定されたコワーキングスペースで仕事する
② 地元関係者との交流・情報交換
③ 滞在中の活動をSNSで発信する-こと。

昨年は約20人が参加、「青森にいても東京にいるのと変わりなく働けることがわかった」や「旅行ではできない、地元の方との交流ができた」などの意見が寄せられた。

Uターン起業実績

村岡 将利氏

2015年度のモニターツアーに参加し、16年に東京からのUターンでIT系企業ビーコーズを立ち上げた村岡将利代表取締役=写真。Uターン前は、地域コミュニティーへの参加などに不安を持っていたが、さまざまな人の協力や紹介で東京にいながらにして地元のコミュニティーに関わることができた。

Uターンして思うのは、「時間の流れが落ち着き、仕事メーンの生活から仕事と遊びを両方考える生活になった」こと。現在の生活に大きな充実感を得ており、「場所にとらわれない仕事ができるのであれば、地方にいることのデメリットは全くないといっても過言ではない」と話す。

【青森のIT関連企業のお問い合わせ】
青森県商工労働部 新産業創造課 情報産業振興グループ
TEL:017-734-9418
E-mail:sozoka@pref.aomori.lg.jp

【IT関連コミュニティーに関するお問い合わせ】
NPO法人あおもりIT活用サポートセンター
TEL:070-6951-4624
E-mail:info@aoit.jp

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