これだけは知っておきたい商標の話

第1回

独自に考えた商品名・サービス名でも使用できなくなることがあるの!?~商標権の効力にまつわる話

堀越 総明 2017年1月17日
 

和菓子と洋菓子の融合!その名も「きんつばモナムール」!


東京下町の老舗和菓子屋「猪野部(いのべ)堂」の15代目として生まれたAさんは、都心の有名洋菓子店でパティシエとして注目を集めていましたが、江戸時代から続く猪野部堂を継ぐために、最近になりその洋菓子店を辞め、今では、先代で父親のBさんとともに和菓子作りの日々を送っています。しかし、Aさんは、パティシエとしての栄光の日々が忘れられません。そのため、ついつい和菓子と洋菓子を融合させた斬新な新商品を考えては、Bさんを困らせています。

Aさん 「父さん、きんつばをシュー生地で包んでみたよ!結構いけるよ!」
Bさん 「やい、A!そんなの食いもんじゃねぇ!徳川幕府も15代でつぶれたからなぁ。お前がこんな新商品ばっかり考えてると、きっと猪野部堂もお前の代でなくなっちまうんだろうな~。」

Aさんは、そんな父親の反対も気にせず、きんつばをシュー生地で包んだ新商品のお菓子を発売することにしました。商品名は、Aさんが独自に考え、「きんつばモナムール」に決定です。
あきれるBさんをよそに、Aさんは、洋菓子店時代に培ったノウハウを活かし、プレスリリースや広告宣伝を駆使して、「きんつばモナムール」のPRに余念がありません。その面白いネーミングも話題になり、「きんつばモナムール」はいくつかのテレビや新聞で取り上げられ、発売と同時に売上は絶好調です。

「きんつばモナムール」はすでに大手菓子メーカーが商標登録していることが発覚!


それから半年後、「きんつばモナムール」はすっかり猪野部堂の新しい看板商品となりました。
「これだけ有名になったんだから、商標登録でもしておくか」と思ったAさんは、知り合いの弁理士Hに依頼して、特許庁に「きんつばモナムール」のネーミングの商標登録出願を行うこととしました。

しかし、商標登録出願に向けて商標調査を終えた弁理士Hから、Aさんのもとに、1本の電話が掛かってきました。
弁理士H「Aさん、大変です!『きんつばモナムール』のネーミングはすでに大手菓子メーカーのC社が商標登録を受けています!」
すると、間もなく、C社から商標「きんつばモナムール」の使用を中止するように、猪野部堂に内容証明郵便の警告書が送られてきました。

Aさん 「そ、そ、そんな~、いまさら使用中止だなんて・・・。『きんつばモナムール』には、すでにたくさんの宣伝費を使っているのに・・・。」



商標権者はその商標を独占的に使用することができます!


商標登録を受けると、商標権者は、その商標をその指定商品(今回の場合は「菓子」)について独占的に使用することができます。「独占的」ということなので、商標権者は、自分がその商標を自由に使用できるだけでなく、他人がその商標を勝手に使用することを止めさせることができるのです。これが商標権の効力です。
また、商標権は「独占的」な権利のため、同じ商標権が複数の人に与えられることはありません。そして、商標権は、原則として、最初に商標登録出願した人に与えられることになっています。

Aさんは、新しい商品名として「きんつばモナムール」という面白い商標を独自に考え、使用してきましたが、残念ながら、同じ商標についてすでにC社が商標登録を受けていました。つまり、商標権者のC社は、商標「きんつばモナムール」を独占的に使用できるので、猪野部堂はC社からライセンスでも受けない限り、商標「きんつばモナムール」を使用することができないのです。

商標登録を怠ると他社に商標を真似されるだけなく自社の使用も危うくなります!!


ビジネスを行う上で、新しい商品名・サービス名を考えたら、まずは、弁理士に依頼して、商標調査を行うことが大切です。特許庁に商標登録されている商標の数はまさに膨大です。かなり独創性が高いと思われる商標でも、すでに他社に商標登録されてしまっていることは珍しくありません。もし、他社が先に商標登録している場合は、商品のパッケージや広告媒体などを作成する前に、商品名・サービス名を別のものに変更すれば、損害を最小限に抑えることができます。

そして、商標調査の結果、商標登録できそうだと判断したら、すぐに商標登録出願するべきです。日頃しばしば、「新しい商品名・サービス名を考えたけど、別に他社に真似されても構わないので、商標登録はしなくていいや」という声を耳にします。しかし、商標登録を怠った場合、他社に商品名・サービス名を真似されるばかりでなく、他社が先に商標登録を受けてしまったときは、自社がその後にその商標を使用することすらできなくなってしまうのです。

さて、Aさんですが、商標「きんつばモナムール」の使用を中止し、仕方なく商品名を「きんつばジュテーム」に変更し、弁理士Hに依頼して、すぐに「きんつばジュテーム」の商標登録出願を行うこととしました。猪野部堂のせっかくの新しい看板商品ですので、Aさんはまた一からPRをやり直して、売上を回復させるべくがんばっているということです。


※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※本コラム記事に登場する商標はすべてフィクションです。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。



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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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