中堅企業にも求められる移転価格税制対応

第15回

移転価格税制の基礎(9) 国別報告事項とは?(CbCレポートとは?)

山中 一郎 2017年7月21日
 
平成28年度税制改正における、移転価格文書化制度の再整備によって、①最終親会社等の届出事項、②国別報告事項(CbCレポート)、③マスターファイル(事業概況報告事項)、④ローカルファイルの、国税当局への提供、または、作成・保存が、一定条件を満たした多国籍企業グループに義務付けられました。

③については、当ブログシリーズの第2回、④については、第14回で、解説致しました。本ブログでは、国別報告事項(CbCレポート)について見て行きます。

国別報告事項(CbCレポート)とは?その記載内容は?

国別報告事項とは、多国籍企業グループの国別の活動状況に関する情報のことです。英語では、Country-by-Country Report と言い、CbCR、CbC Reportなどと略されることもあります。報告様式は下記の表1~3の三表で、国税庁のホームページに掲載されています。記載は英語で行う必要があります。

(表1) 居住地国における収入金額、納付税額等の配分及び事業活動の概要
(グループの構成会社の事業が行われる国・地域ごとの収入金額、税引前当期利益の額、納付税額、発生税額、資本金の額、利益剰余金の額、従業員の数、及び、有形資産(現金及び現金同等物を除く)の額)

(表2) 居住地国等における多国籍企業グループの構成会社等一覧
(グループの構成会社の事業が行われる国・地域ごとの、構成会社の名称、構成会社の居住地国と本店所在地国が異なる場合のその本店所在地国の名称、及び、構成会社等の主要な事業活動)

(表3) 追加情報(表1、2について参考となるべき事項)

国別報告事項(CbCレポート)の提供義務があるのは?

国別報告事項は、前年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループに提供義務があります。

なお、提供義務の免除基準は国によって異なりますので、現地法人が所在する国の税法の規定を確認する必要があります。

国別報告事項(CbCレポート)の提供期限はいつか?適用開始時期は?

国別報告事項は、最終親会社の会計年度終了の翌日から一年以内に、e-Tax(国税電子申告・納税システム)により、所轄税務署に提供することとなっています。これは、平成28年4月1日以後に開始する最終親会社の会計年度から適用されます。

国別報告事項の外国税務当局との自動的情報交換

国別報告事項は日本と外国との租税条約に基づく情報交換制度により、海外子会社等の居住地国の税務当局へ提供されます。国別報告事項は、英語で作成しなければなりませんが、外国税務当局と情報を共有するためでもあるのです。

外国税務当局は、国別報告事項を利用して、当該国における利益率と他国の利益率の比較が可能となります。利益率が低い場合には、税務調査を行うことが考えられますので、その合理性を証明できるように準備しておく必要があるでしょう。

親会社主導で移転価格リスクの管理を

海外の子会社を通じてグローバルにビジネスを展開するにあたっては、日本の税法だけでなく、相手国における税法を遵守しなければなりません。現在、日本の国税当局は海外関連者取引をはじめとした国際的な課税問題に力を入れ、外国税務当局との情報交換を積極的に行っています。国別報告事項の情報交換もその一つです。

グループ全体を見渡せる親会社は、税務上問題となりそうな海外拠点や関連者間取引を洗い出して、移転価格に係る税務リスクの検討、排除を主導することが求められます。

以上
 
 

プロフィール

朝日税理士法人
公認会計士・税理士 山中 一郎


朝日新和会計社(現あずさ監査法人)退職後、現在は朝日税理士法人代表社員および朝日ビジネスソリューション株式会社代表取締役。


国際税務業務、海外進出支援業務の他、株式上場支援業務、組織再編、ベンチャー支援等 の税務・コンサルティングサービスを行っている。


主な著書: 「図解&ケース ASEAN諸国との国際税務」(共著/中央経済社)、「図解 移転価格税制のしくみ 日本の実務と主要9か国の概要」(共著/中央経済社)、「なるほど図解M&Aのしくみ」(共著/中央経済社)、「事業計画策定マニュアル」(共著/PHP) など多数

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