製造業者が知るべきテクニカルマーケティングのツボ

第8回

代替技術で価値を考える

後藤 亘 2018年4月17日
 

マーケティングとして技術の情報発信を考える際には、カタログでもホームページでも
様々なメディアを使って、自社が持つ技術力とそのメリットについてアピールする
必要があります。
しかし作り手目線の一般的・技術的な宣伝メッセージしか出来ていなければ、
潜在顧客にはその技術の良さは伝わりませんし、どんな利用の仕方ができるか
想像することも困難です。


今回は、自社が持つコア技術の特徴や価値を理解してもらうときに使える、
1つの切り口を解説いたします。
技術によって使えるケース、使えないケースがありますが、使えるケースであれば
ストンとユーザーが感じるベネフィットが腹に落ちてきます。


それは、この質問について考えることです。


「その技術が無かった場合、なにか他の技術や手段で置き換えできるのか?
どうすれば代替出来るのか?」


多くの場合、「代替技術で出来なくはないが、余計な工数やコストがかかる」という答えかと
思います。
その場合は、それをわかりやすく比較する情報をコンテンツとして見せなければなりません。


例えば、ある工作機械で部品を搬送する工程で利用できる、特殊な部品の加工・研磨の
技術のケースを考えてみます。
従来の加工・研磨技術で搬送すると、どうしても特定の箇所で部品の滞留が発生して
しまうのですが、この特殊な加工・研磨を使うことでこの滞留がなくなるというものです。
従来は滞留のために必要としていた、設備を止めてメンテナンスするといった工数を
省くことが出来るという利益が生じます。
この利益は経営者にとっても数字として捉えやすく、加工・研磨の技術そのものを
説明するよりも、価値をすんなり理解できます。


その一方、「何を持ってしても置き換えできない」というようなユニークな技術であれば、
それをわかりやすく伝えなければなりません。
しかしこれは以外に難しいものです。人はいままで全く見たことも聞いたことも
ないようなモノを見せられても、理解しにくいものです。


この場合は、一般に馴染みがあるもので置き換えたり、イメージし易いたとえを
使ったりして、ユーザーの想像力に頼るしかないでしょう。


例えば、最近流行りのディスプレイ技術に有機ELがあります。
この有機ELは、一般に広く使われている液晶ディスプレイと違い、自分で発光する
自発光技術です。
ですので本当の「真っ黒」を表現することが出来ます。
液晶ディスプレイは自発光ではないので、映像を写すときには裏からLEDなどで照明を
当てなければなりません。
ですから完全な「真っ黒」を表現できないのです。


しかし私達が、「あなたのテレビで真っ黒は表現できないんです」と言われても、
ピンとこないでしょう。
ですから、一部の有機ELテレビなどでは、意図的に黒い映像を写して
従来の液晶テレビと並べて比較することで、真っ黒とはどう見えるのか?
をアピールしています。こういった工夫が生きてきます。


このように代替技術を考えることで、改めて自社技術の価値をどう見せるのが良いのか、
わかってくる場合があります。


どうですか?
あなたの会社が持つコア技術は、何かで代替できますか?

 
 

プロフィール

株式会社ルーセントコンサルティング
代表取締役 後藤 亘

大学卒業後30年間、主に通信、半導体業界における外資系企業でキャリアを積む。

エンジニア時代には、携帯端末向けやガスメーター向けなど数多くの半導体設計に携わる。その後、そのような電子部品をセットメーカーに対して拡販するマーケティングに異動。そこでは、技術とアプリケーション(使用用途)の両方を熟知した顧客提案が功を奏し、多くの分野で新規案件を獲得してきた。

また、40歳を前に大学院に入学、技術の商業化やマーケティングを学術的に身につけてMBAを取得。その理論的裏付けと専門技術的な知識を、その後の数社の外資系企業でのマーケティング活動に活かした、技術マーケティングのプロ。

現在は、前職で培った経験と実績をベースに、国内の中小製造業が持つ独自技術の「見せ方」を工夫して用途開発を加速させることを目的とした「用途開発誘起戦略」を提唱し、これを実践するための仕組みづくりを体系化して、製造業経営者の方にコンサルティングを行っている。

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