製造業者が知るべきテクニカルマーケティングのツボ

第10回

「想定外」で用途を拡大する

後藤 亘 2018年5月15日
 

想定外という言葉が一般的によく使われることになったのは、東北大震災時の原発事故が
きっかけだったように思います。


一般に想定外というのは、「発生すると期待していた、考えていた事と全然別な事象が
発生すること」と、「発生しうると期待していた、考えたレベル以上の事象が
発生すること」の2つに分けられると思います。


製造の現場で議論されるのは、後者の方が多いでしょう。
例えば製品の仕様を決める時に、環境温度50度までは正しい機能を保持できるが、
それを超えると60度で機能を停止し80度で破壊に至る、という想定を置いたりします。
なので、60度の環境で使われることは「想定外」ということになります。


では、前者の「想定外」はどうでしょうか?


実はこの想定とは全く別の事象が起きる「想定外」には、用途開発を拡大する
非常に良い側面があります。


企業の経営戦略を立てる時に、大企業であれ中小企業であれ、製造業であれ
街の小売商店であれ、必ず考えなければならないことがあります。


それは、「自社の強みを見つける」「他店との差別化を図る」です。
製造業であれば、常に自社の技術的な強みを把握して、それを活用することが
基本戦略でしょう。


しかしビジネスとして持続、成長させるためには、この自社の強みである技術を
使った製品が、市場に多く流通する必要があります。
つまり、形を変えて様々な用途に利用活用されて、それが市場を開拓し拡大させていく
ことが理想です。


その時にメーカー側が、「この技術を使うとこんな価値を生み出せるから、
こういう用途に利用される」と固定観念を持ってしまうと、自らマーケットを
狭めてしまいかねません。
ここは良い「想定外」が起きることを是非期待したいところです。


まるっきり別の使い方、利用の仕方をユーザーが見つけることで、
つまりあなたが「想定していない」使い方から、別の新しいマーケットが広がる
ことがあるからです。


例えば、元々はバーコードの情報量不足を補い、自動車の生産工場での部材管理を
想定して作られたQRコード。
今ではスマホのカメラで読み取ってウェブサイトに誘導する使い方は、
当初は想定していない使い方に応用された例でしょう。
もちろん、開発当時にはスマホ自体がない時代でした。それでも、スキャナーでなく
カメラで読み取る。しかも一般消費者がそれを使いこなす、ということは
想定していなかったでしょう。


このように「そんな使い方があるんだ!」とメーカー側が思うくらいの「想定外」が
新しい利用方法を発想させて、思いもよらない用途開発が進むことがあります。


その際に必要なのは、「こんな技術がありますよ」と情報発信すること。
つまりマーケティングです。


QRコードでも、技術的な仕様は全てオープンになっています。


それがユーザーに対して「想定外」の用途を発想させる原点とも言えるでしょう。


あなたの会社では、自社の技術仕様をオープンにして新しい用途開発を
促進させることができるものがありますか?

 
 

プロフィール

株式会社ルーセントコンサルティング
代表取締役 後藤 亘

大学卒業後30年間、主に通信、半導体業界における外資系企業でキャリアを積む。

エンジニア時代には、携帯端末向けやガスメーター向けなど数多くの半導体設計に携わる。その後、そのような電子部品をセットメーカーに対して拡販するマーケティングに異動。そこでは、技術とアプリケーション(使用用途)の両方を熟知した顧客提案が功を奏し、多くの分野で新規案件を獲得してきた。

また、40歳を前に大学院に入学、技術の商業化やマーケティングを学術的に身につけてMBAを取得。その理論的裏付けと専門技術的な知識を、その後の数社の外資系企業でのマーケティング活動に活かした、技術マーケティングのプロ。

現在は、前職で培った経験と実績をベースに、国内の中小製造業が持つ独自技術の「見せ方」を工夫して用途開発を加速させることを目的とした「用途開発誘起戦略」を提唱し、これを実践するための仕組みづくりを体系化して、製造業経営者の方にコンサルティングを行っている。

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