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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第9回

普遍的ながら新たな示唆を与えてくれる

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「三上部長の言われるマネジメント・コントロール・システム(MCS)は、担当者と役割、そしてコントロールの仕組みが肝だと仰いましたね。」

「そうだ、よく覚えていたな。」

「でも、よくよく考えてみると、マネジャーがいて、マネジメントをする。それを上司がチェックして指導したり、評価して賞罰を与えたりするなどでコントロールする。これは、現状と何ら変わらないのではありませんか?このように考えたら、MCSなんて大層なものを引き合いに出してくる必要なんか、ないと思うのですが。」

「そう感じるのも当然かもしれないな。中川課長の疑問には、2つのアプローチで答えておこう。一つは、『そうなんだ。「マネジャーを任命して、行うべきマネジメントを明確化して役割として与える。それを上司がチェックしてコントロールに繋げる」というMCSの考え方は、それほど普遍的なものなんだ。実は意識せずに使っているものなんだ』という答え。もう一つは、『MCSが教えてくれることは、それだけではない。今やそれ以上の示唆がある。それらも伝えようと思っている」』という答えだ。」

「なるほど。広く浸透している考え方の、最先端の成果を教えてくれるという訳ですね。」

2種類のマネジャーによる、2種類のマネジメント

「さて、先ほど中川課長が指摘してくれたように、MCSの根幹は『マネジャーを任命して、必要なマネジメントをさせる。それを上司がチェックしてコントロールに繋げる』ということにある。但し、MCSでは2種類のマネジャーを想定している。2種類のマネジャーが、2種類のマネジメントを行っているという訳だ。」

「2種類のマネジャーですって?どう分けたら2種類になるのですか?マネジャーは、全体として把握するか、それとも係長、課長、部長、部門長などと組織階層に応じて分けるものではないのですか?」

現代企業の機能の仕方

「そのためにはまず、現代企業というものの機能の仕方について考えてみよう。企業とは、どういうものだ?」

「ぶっちゃけて言えば、製品やサービスを提供して儲けるということではないですか?」

「その通りだ。でも、それだけで良いのか?」

「と言われると・・・。」

「製品やサービスの提供に、企業のトップはあまり関与していないよな。それなのにトップが君臨し、指示・命令を出し、高い給料をもらっているのはなぜなんだろう?」

「企業のトップは、会社の方向性を示すという役割を果たしています。戦略ですね。良い戦略のもとに展開している企業はうまくいくし、戦略がまずい、もしくは戦略のない企業はうまくいかない。今や例外はないと言って良いと思います。」

「その通りだ。だからマネジメントにも、2つのフェイズがある。」

「製品・サービスの実現と、戦略の策定ですね。」

「まさに、そうだ。」

「とすると、現場のマネジャーは製品・サービスの実現に関わるマネジメントをする。それよりもっと上のマネジャーは戦略に関わるマネジメントをする、そういう2層構造になっているということですね。」

「いやいや、それは違うな。」

「えっ、それでは話が違うではないですか?」

「いや、違わないよ。マネジメントのフェイズと、マネジメントの種類は違うんだ。ちょっと、分かりにくいけどな。」

「すごく分かりにくいです。説明して下さい。」

現場マネジャーの役割

「現場のマネジャーは、製品・サービスの実現に関わるマネジメントだけを行っている訳ではない。経営戦略の実現に関わるマネジメントも行っている。」

「なるほど、言われてみたら、そうですね。経営戦略の実行とは、現場が行うものでした。」

「その通りだ。もう少し言うと、経営戦略の実行とは、経営戦略に沿って現場の仕事を変えていくことだと言える。」

「現場マネジャーは、製品・サービスの実現に関わるマネジメントと、製品・サービスの実現プロセスを経営戦略に沿って変えていくマネジメントを行っていると言うわけですね。」

「その通りだ。マネジメントの中でも、行動に直結したというか、現場の働きを促し円滑化させるマネジメントと言えるだろう。」

上級マネジャーの役割

「とすると、より上位のマネジャーは何をしているのですか?」

「経営戦略を策定して展開している。経営戦略と一言でいったが、ここでは、経営戦略や経営理念、その他の基本的方針なども含んでいる。」

「それを現場のマネジメントと対比する意図は何ですか?」

「現場のマネジャーが行うマネジメントは現場の行動に関わるマネジメントだが、上級マネジャーが行うマネジメントとは情報の取り扱いなんだ。」

「情報の取り扱い?」

「経営トップは経営戦略を策定するが、でも、それだけでは現場は動けない。経営戦略を実現するためには自分たちは何をすべきかを、教えてもらわなければならない。つまり、経営戦略をブレークダウンしてもらう必要があるということだ。上級マネジャーは、その部分を担当している。経営戦略という、とても抽象的な情報を、現場が動けるような具体的な情報にブレークダウンするというマネジメントだ。」

「なるほど。マネジャーの中でも比較的上位にいるマネジャーは、鉛筆なめなめ仕事をしていますよね。それは、経営戦略を具体的にどうやって実現していくかの計画を立てるという、情報を扱う仕事をしているという訳ですか。」

「そういうことだ。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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