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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第6回

精神論ではないマネジメント体系を作り出していく

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「先日は、いろいろとありがとうございました。」

「どういたしまして。お役に立てたかな?」

「もちろんです。でも、少しご相談したくて、今日、お会いいただけるよう、調整させて頂きました。」

「なんなりと。」


「先週、テーラーのマネジメントと、ドラッカーの考えた正統性についてのお話をお伺いしました。」

「そうだったな。」

「テーラーは、現場の作業者がよりよい仕事ができるように支援することがマネジメントだと考えたということですよね。」

「そうだ。」

「でも、その考え方だけでは、なぜ上司が部下に命令できるかが分かりません。なのでドラッカーが正統性という考え方を導入しました。『上司の言うことを聞いておけば上手くいくと部下が認めるから、部下は上司の言うことを聞く』という考え方でした。」

「ご名答だ。」

「先週、このお話をお聞きして、私、興奮したんです。すごく良いお話をお聞きしたなと。」

「それは光栄だ。」

「それで、伺ったお話を元にレポートを書こうと考えたんです。」

「組織企画室としてのレポートだな。」

「そうです。」

「どうだ、順調か?」

「いえ、全く進んでいません。というか、あのお話ではレポートは書けないことに気が付きました。」

「どういうことだ?」


「三上部長のお話だと、これからマネジャーは、現場の作業者がよりよい仕事ができるように支援すべきだということなんですね。」

「そうだ。それがマネジメントの、あるべき姿だと考えている。」

「しかし、それが分かっただけでは、言葉を変えれば精神論だけでは、我が社のマネジメントとして認める訳にはいきません。それでは回っていかないと思うのです。」

「というと?」

「マネジメントをこのように定義してしまうと、マネジャーがマネジメントできなくなってしまうのではないかと考えました。」

「うん?言っている意味が分からないのだが?」

「三上部長がお話下さるような展開になると、マネジャーは現場の仕事を肩代わりしなくてはならなくなってしまうと思うのです。」


「うーん、よく分からない。なぜ、マネジャーが部下の仕事を肩代わりするようになるんだ?それは、マネジメントではないではないか!」

「確かに、仰るとおりです。しかし、現実にそう考えるマネジャーがいるだろうことは、部長もお認めになるのではありませんか?」

「いや。そう言われると、その可能性はありそうだな。」

「この考え方では、部下が上司の言葉を聞く理由は、上司の指示に従ったら良い結果が得られるというものでした。」

「そうだよ。」

「そして、部下が上司を評価する訳ですよね。」

「そうだ。それが全てではないし、メインでもないけれど。」

「とすると、部下は、自分の仕事を肩代わりしてくれる上司を高く評価すると思います。」

「なるほど。」

「そして上司も、我が社の現状では、というより今の日本ではどこでもそうなのではないかと思いますが、マネジメントよりも現場の仕事の方が得意です。苦手なマネジメントをするよりも得意な現場の仕事をしていた方が高く評価されるなら、彼らは喜んで肩代わりするでしょう。」

「なるほど。」

「こうやって考えてみたら、マネジャーが現場の働き手をサポートするというマネジメントは、上司も部下も勘違いしやすい、それも結果的には上司が部下の仕事を肩代わりするなんて本末転倒の事態を引き起こす可能性のある考え方だと思います。そんな考え方を、導入する訳にはいきません。それが、筆が止まった理由です。」


「よく考えたな。さすが中川課長だよ。」

「お褒めくださって嬉しいですが、三上部長のお話の間違いが分かっただけです。私にとっては、得たかった答えが得られないし、三上部長にとっては、ご自身の持論が否定されたことになります。双方にとって、何らの良いところもありません。」

「いやいや、得るところ大だよ。大ありだ。」

「どうしてそう言えるのですか?」

「中川課長が、俺が本当に言いたかったことに気が付いてくれたからだ。」

「えっ、そうなんですか?」


「今まで俺が説明してきたことを『精神論』と片付けられたのは、ちょっと俺も心外だが・・・。」

「申し訳ありません。言葉が過ぎました。」

「いや、そう言われても仕方がないと思う。俺も、家に帰って少し考えてみたんだ。中川課長は、俺の真意を分かってくれたのかと。」

「申し訳ありません、分かっていませんでした。」

「いやいや、そんなことはない。今までの話だけでは端緒にしかならないことに気が付いてくれた。どんなに良さそうな話でも、それが実行できなかったら何の意味もないからな。本当に大切なことは、実行なんだ。」

「もちろんです。しかし、私は部長の考えでは実行できないと申し上げているのですよ。」

「だから俺は、実行についての肝心なことを、まだ話していないと言っているんだ。」

「肝心なことと仰ると?」

「今まで俺が言ってきたのは、マネジメントの目的と、マネジメントの運用方法だった。運用方法といっても、全体像ではない。ほんの一部だ。」

「はあ。」

「我が社で新たなマネジメントを取り入れて実行するためには、システム化する必要がある。」

「システム化?どういう意味ですか?」

「マネジメントを体系立てて、マネジメントとして行われるべきことがきっちりと、システマチックに行われていくような仕組みを作っていくという意味だよ。」
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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