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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第42回

現場マネジャーのマネジメント方法(リザルト・コントロール)(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーが現場をマネジメントしようとする時、どんな方法を利用できるのか、というお話をお聞きしているところです。」

「2番目の方法はリザルト・コントロール、すなわち働き手による成果でもってコントロールすることだ。」

「以前にお聞きしましたね。ノルマも、リザルト・コントロールに入るとのことでした。と聞くと、あまり良いイメージはないのですが。」

「そうだ。ノルマを課し、その成果でもって評価することは、リザルト・コントロールの代表的なやり方だ。」

「私はそれを聞いて、リザルト・コントロールは非人間的なマネジメントだと思ってしまうのですが、部長はそうではないと思っておられるようですね。」

「もちろん、そのような側面は否めないけどな。実際は人間的な配慮から生まれてきたのだと、俺は思うんだ。」

「今回は、その辺りからご説明いただけませんか?」


アクション・コントロールが秘めた問題

「ノルマと聞くと非人間的なマネジメントだと感じてしまうと中川課長は言うが、そういう感覚って、多くの場合、何かと比較してのことだよな。それは何だ?」

「マネジメントには、何かこう、自由にやらせる方法があるではないですか。」

「そういうのってマネジメントといえるのかどうか俺には分からないけれど、あこがれている人は少なくないよな。」

「ええ、まあ、そうです。」

「一方で、アクション・コントロールと比べるとどうだろう?仕事でなすべきことを一挙手一投足まで指示・命令するアクション・コントロールは人間的と言えるだろうか?」

「それは言えないでしょうね。」

「チャップリンの、有名な映画にもあるよな。そういうマネジメントは非人間的だと感じられてしまうんだ。」

「『モダンタイムス』ですね。映画で見ると滑稽ですが、あの映画は厳格なマネジメントを批判していたのでしょうね。」

「アクション・コントロールは近代の黎明期、素晴らしい成果をあげた。しかし、問題も秘めていた訳だ。」

「なるほど。」


ノルマに秘められた人間的配慮

「それへの対応として生まれたのがリザルト・コントロールではないかと、俺は思うんだ。」

「アクション・コントロールよりも人間的なコントロールとしてですね。」

「アクション・コントロールはなぜ、非人間的だと感じられてしまうのだろう?」

「創意工夫させないことでしょうか?考えるのは全てマネジメント側が行うので、作業員はただ手を動かしていれば良いというスタンスです。」

「そうだよな。じゃあ、どうすれば良い?」

「自分で創意工夫してくれと依頼するのでしょうか?」

「何を目指して?」

「目標は、提示することになると思います。」

「そちらの方がアクション・コントロールよりも人間的だと思う?」

「思います。」

「目標を提示して創意工夫を期待する。それこそリザルト・コントロールではないのか?ノルマではないのか?」

「あれっ、そう言われてみると、そうですね。だから三上部長はリザルト・コントロールのことを、もともとは人間的な思いを持って開発されたものではないかと言われているのですね。」

「そういうことだ。」


リザルト・コントロールを人間的にする方法

「もともと人間的な思いでもって作られたリザルト・コントロールですが、今は部下に厳しく当たるツールとして用いられていると思います。どうすれば、良いのでしょうか?」

「確かにな、俺もそう思うよ。そしてそれは、原点に立ち戻れば意外と難しくないと考えているんだ。」

「原点に立ち戻ると難しくない?どういう意味ですか?」

「リザルト・コントロールというのは、期待する結果を示して実現方法などは創意工夫するよう任せるマネジメントだ。それが原点だ。」

「それは分かります。でも、なぜそれが人間的なマネジメントにするポイントになるのかが分かりません。」

「期待する成果が得られなかった場合は、何が問題なんだろう?」

「創意工夫ができなかった、ということでしょうね。」

「そうだ。その場合、給料を減らすとか、希望しない仕事に就けるという措置を執ることで、彼らは次に成果を出せるようになるのだろうか?」

「いや、そうではないと思います。」

「じゃあ、どうすれば良い?」

「創意工夫するためにどういう考え方ができるか研修を行うとか、チームでそれができるようにトレーニングするとか、できるかもしれません。」

「そうなんだ。創意工夫を期待したにもかかわらず十分な結果が得られなかった場合には、十分な結果が得られるように支援をする。それがリザルト・コントロールの本来の使われ方ではないかと、俺は思うよ。」

「そういう本来の使われ方をすれば、ノルマ制もこんなにも嫌われることはなかっただろうにと思いますね。」

「ああ、そうかもな。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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