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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第38回

現場マネジャーのマネジメント方法(全体像)(後編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「先回、現場マネジャーがどうやってその役割を果たしていくかについて、お話し頂きましたよね。」

「そうなんだ。現場マネジャーは、アクション・コントロール、リザルト・コントロール、そしてピープル・コントロールという方法でもって、部下に働きかけていくことになる。」

「その3つについては、もう少し噛み砕いて教えてくれるのですよね。」

「ご希望なら、もちろん教えるよ。」

「ありがとうございます。それをお聞きする前に、一つ質問して良いですか?」

「何だ?」


3つのコントロール方法に優劣はあるのか

「3つのコントロール方法をお聞きして、それらはどうも、マネジメント手法が開発される歴史的な経緯に沿っているような気がしました。その理解で、正しいのでしょうか?」

「うーん。そのようなことを指摘した論文など、読んだことはないが、そういうイメージではないかな。」

「ということだと、アクション・コントロールでうまくいかなかったのでリザルト・コントロールが開発された。リザルト・コントロールでうまくいかなかったのでピープル・コントロールが開発された。そういう経緯ではないですか?とすると、最後に開発されたピープル・コントロールが最も優れていると考えて良いのでしょうか?」

「その質問の趣旨は何だ?」

「いや、ピープル・コントロールが一番優れているならば、それだけ教えてもらえば良いかなと思いまして。」

「現金な奴だな。その質問に対しては、半分合っているし、半分間違っていると言えると思う。」

「どういうことですか?」


歴史的な変遷

「近代マネジメントが発展する中で、アクション・コントロールが最初に注目されたというのは間違いないと思う。そして、それだけではうまくいかない状況が発生したのでリザルト・コントロールが注目された。そういう表現もできるだろう。アクション・コントロールやリザルト・コントロールでうまくいかない状況が起きたので、どうにかしなければと検討された。そして心理学的アプローチを応用しながらピープル・コントロールが開発されたというのも、間違いではないと思う。私が参照してきた資料の指摘や、実際に仕事しながらの印象からしても、そのように感じられる。」

「ではやはり、ピープル・コントロールが一番なのでしょうか?」

「いや、それは、違うような気がするな。」

「どういう意味ですか?」


各コントロールの得意分野

「さっき『半分間違っている』と言ったよな。それは、これらコントロールには得意分野があるということだ。」

「例えば?」

「クリエイティブな仕事をしている人々を、アクション・コントロールやリザルト・コントロールでマネジメントできると思うか?」

「それは無理でしょうね。ピープル・コントロールが最適だと思います。」

「俺もそう思う。でも、営業マンはピープル・コントロールでうまくマネジメントできるだろうか?」

「それは無理そうですね。」

「じゃあ、アクション・コントロールする?」

「いや、それではマニュアルの文句を覚えたての新人セールスマンですよ。」

「そうだよな。営業マンをマネジメントする時には、リザルト・コントロールが最適だろう。」

「なるほど。」

「では、我が社の水道器具組立工場だったらどうだ。リザルト・コントロールが有効だと思うか?」

「マネジャーにはノルマが課せられるのでしょうけどね。しかし組立に実際に携わる働き手に対するマネジメントはアクション・コントロールでしょう。」

「その通りだ。」

「このように、3つのコントロールには得意分野がある。裏を返せば不得意分野もあるということだ。なので目的に沿ったコントロール方法を選ぶことが、効果的なマネジメントの第一歩になるんだよ。」

「分かりました。一つに絞って勉強するというのはダメだということですね。」

「手を抜かずに、全部を勉強してくれ。」


3つのコントロールの活用方法

「この説明から、何か思いつかないか?」

「何か?」

「以前に、現場マネジャーは矛盾解消に努めるのが仕事だと言ったよな。」

「そのお話、覚えています。」

「例えば、我が社の水道器具組立工場のことを考えてほしい。作業の効率化と品質の向上、両方を実現しなければならない。」

「なるほど。矛盾した要求の典型例ですね。」

「そうなんだ。これに対処するために、今言ったことを応用できないだろうか?」

「品質の向上は、アクション・コントロールが有効でしょうね。熟練作業員に高品質を実現する手順を考えてもらい、それを作業員全員に守らせるわけです。」

「そうだな。」

「作業の効率化はどうだ?」

「ノルマを課して実現させるリザルト・コントロールが有効なのでしょうか?」

「俺もそう思う。もちろん、効率的な手順を考えてもらい、それを実行させるというリザルト・コントロールも併用できるだろうけどな。しかし、目標を達成するように強く動機付けるのはリザルト・コントロールだろう。」

「なるほど。」

「このように、矛盾する課題に対処するために、複数のコントロールを併用するという方法がある。」

「確かに。コントロールに3種類あるというのは、意外と便利なものなのですね。」

「そういう感想、初めて聞いたけどな。でも、それが素直な実感なのかもしれないな。」
 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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