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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第35回

現場マネジャーの役割(環境整備)(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーの役割について、パフォーマンスの向上、連携、戦略対応、矛盾解消と教えてもらいました。そろそろ、終わりですかね。」

「そうだな。MCSの考え方による現場マネジャーの役割として、今回伝える環境整備で最後になる。」

「何ですか?その環境整備というのは。」

「マネジメントする環境を整備するということだよ。」

「ますます分かりません。マネジメントというのは、組織が準備してくれた仕組みに基づいて行うものなのではないのですか?」

「ほう、その意味は?」


なぜマネジャーの指示・命令に従うのか?

「今、三上部長が言われた環境整備という言葉、私は『マネジャーが、自分の指示や命令を部下が聞いてくれる下地を作る』という意味だと受け取りました。でもそれは、マネジャーを任命した組織が整えてくれるものではないかと思うのです。」

「マネジャー自身が『俺の言うことを聞け』というのではなく、組織が『彼が君たちの上司だ。指示や命令を聞きたまえ』と言うべきだという意味だな。」

「端的に言えば、そういうことです。」

「中川課長の言っていること、今の状況からすると当然の感覚だということ、俺も理解できるよ。しかし今や、マネジメントの原理は王権神授説ではないと思う。だからこそ、環境整備はマネジャー自身が行う必要があるんだ。」

「何ですか?その王権神授説というのは。」

「前にも言っただろう。『より上位にあるマネジャーから権限を与えられたから自分はマネジャーになった。私がマネジャーになった以上は、みんな私の言うことを聞かなければならない』というスタンスで行うマネジメントのことだ。」

「ちょっと言い過ぎのような気もしますが、マネジャーになるということは、そういうことなのではないですか?」


Win=Win関係によるマネジメント

「これが常識化していることは、俺も認めるよ。しかし、このようなマネジメントはうまくいっているか?」

「そう言われれば、上手くいかない時も多いと、認めざるを得ません。しかし、他に選択肢はあるのですか?

「俺は、機能するマネジメントというものは、『マネジャーの言うことを聞けば自分の仕事が上手くいく。パフォーマンスが上がる。より多くの成果が得られるようになる。だからマネジャーの言うことを聞こう』と部下から認められることによって発揮されるものじゃないかと思う。」

「なるほど。Win=Winによるマネジメントですか。確かに、それは一つの考え方ですね。」

「そうなんだ。」


マネジャー自身がWin=Win関係を構築する

「でも、その環境整備は、どのように行うのでしょう?」

「あるマネジャーだと上手くいかなかった部署が、マネジャーが変わった途端に上手くいくようになった。そんな経験はないか。」

「あります、あります。私が係長時代の人事課がそうでした。」

「もしかしたら俺と中川課長が初めて出会った部署のことか?」

「そうです。」

「この場合、俺は前任者の方なのか、後任者の方なのか、ちょっと気になるところではあるけどな。まあ、気にしないで先に進めるとしよう。」

「はい。」

「前任マネジャーだと上手くいかなかったのに、後任マネジャーに変わった途端に上手くいくようになった理由は、何だろう?」

「マネジメントが上手だったのではないですか?」

「部下への指示・命令が的確だったとか、そういうことだな。」

「そうです。」

「そういう、マネジメントそのものの巧拙というのもあるとは思う。しかし、他にはないか?」

「うーん。」


部下の働きが成果を生むようにする

「例えば他部署とトラブルがあり、解決しなければならない。ということで他部署の担当者と打合せするよう指示されたが、上手くいく時もあれば、上手くいかない時もある。」

「そうです。思い出しました。最初、他部署の担当者に打合せを求めても、忙しくてなかなか会ってくれなかったんです。」

「それで、どうなった?」

「部長に言われて、気を取り直して電話し直すと、なぜか『待ってました』とばかりに話し合いが持てました。一件落着です。」

「その差は、どうして生まれたのだろう。」

「そう言われてみると、何故でしょう?」

「あの時に俺が行ったことが『マネジャーの環境整備』ではないかと思うんだ。」

「環境整備?それは何ですか?」

「先方の課長に『今、トラブルが起こっているけれど、協力して何とかしなくてはならないよな。だから、我が課の担当者をそちらに伺わせるから、上手く調整できるように取り計らって欲しい』と電話したんだよ。」

「なるほど。そうしてもらったから、対応が急に変わったのですね。」

「そうなんだ。自分の指示・命令を部下が実行して成果を出せるように工夫する。それがマネジメントの環境整備なんだ。」

「なるほど。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

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