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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第29回

現場マネジャーの役割(戦略対応)(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「現場マネジャーのマネジメントについて、ここまで現場のパフォーマンス向上と周囲との連携について説明した。」

「そうですね。現場が今、取り組んでいる仕事でより大きな成果を出せるように導く役割だと理解しました。」

「その通りだ。そして次に、最もMCS的な役割について話そうと思う。戦略への対応だ。」

「そう言われると、疑問がムクムクと生まれてきますね。戦略への対応というのは、そんなに特別なものなのでしょうか?私も長いこと、現場マネジャーを務めさせて頂き、上から戦略のお達しがあることがありますが、結果としては日常業務を淡々とこなしてきたという意識です。特別な意味は、あまり感じられないのですが。ましてやMCS的だなんて、どういう意味なのでしょうか?」

「確かにそうだろうな。ではまず、その辺を簡単に説明しよう。」


戦略への対応とは

「ここでいう戦略への対応とは、シンプルに言うと、経営戦略に合わせて現場の仕事を変えていくことだ。」

「経営戦略に合わせて現場の仕事を変えていくことですって!どういう意味ですか?」

「現場は、付加価値を生む仕事をしている。多くの企業では、特に我々のような大企業では、仕事は決まっていることが多い。日々、改善が求められているとはいえ、大筋の流れとしては変化のない、安定した仕事をしている。」

「まあ、そうですね。」

「そこに経営陣が経営戦略を打ち出したとしよう。現場の仕事は、変わらなくて良いのか?」

「いいえ、そんなことはないです。すごく印象に残っているのは、水道関係の器具について高級化路線を敷いた時です。」

「ああ、あの時のことを知っているのか?」

「新人だったから、その時はコトの凄さは分かりませんでした。ただ、先輩たちがすごくピリピリしていることを感じたのです。」

「そうだな。現場は当初は、今までの製品が少し高級化するからといって大した違いがないとタカをくくっていたようだった。」

「みんな、加工が難しくなるだろうと考えていたんです。だったら、時間をもらいながら対応するしかないと。」

「しかし実際に図面が来てみると・・・。」

「実際はシンプルな設計になっていたものの方が多かった。だからみんな、最初は安堵したんですが・・・。」

「精度への対応が半端なかった。」

「そうなんです。並大抵では対応できませんでした。現場が、仕事の手順から管理方法まで、全てを大きく変えなければ対応できませんでした。ついでに、職場の雰囲気まで変わってしまいました。」

「そうなんだ。ちょうどその頃、中川課長が入社してきたんだな。」

「そうなんです。その時の現場は、混乱の極みでした。いつもギスギスしたような雰囲気で・・・。」

「そうなんだ。俺も、その時のことを思い出す。そして、次にそういう事態が起きたら、もっとうまく対応して欲しいと思う。しっかりとした現場マネジメントを行うことによって。」

「確かに、現場が戦略へうまく対応できないと、大変なことになりますね。振り返ると、当時はそれなりに現場マネジャーの皆さん、努力していましたが、もっと上手く対応できたのかもしれません。」


MCSらしい役割

「そうなんだ。その、戦略に上手く対応するためにMCSの考え方がポイントになるんだ。」

「なるほど。」

「MCSとは何か、覚えているか?」

「いやー、そんな話もありましたね。しかし随分と昔のことなので・・・。」

「少し前の話だから忘れても仕方がないかもしれないが、これで覚えておいてくれよ。MCSとは、マネジメントをうまく機能させるため、担当者とその役割を明確化して実行させると共に、それがうまくいかなかった場合にはコントロールする仕組み(システム)のことだ。」

「そうですね。思い出しました。」

「そして経営理念や経営戦略を打ち出すことは、上級マネジャーの役割だ。」

「そして、それが現場に実行されなければ何の意味もないというのが三上部長の持論ですよね。」

「俺の持論という訳ではない。そうしなければ全く意味がないんだ。それがマネジメントというものなんだ。」

「そんなに熱くならなくても良いですよ。部長の仰ることは理解していますから。MCSは、まさに、トップが打ち出した経営理念や経営戦略を現場に実現してもらうためにあるのですね。」

「そのためだけではなけれどな。しかし、それがNo.1の目的であることは、中川課長の言う通りだ。」

「なるほど。」

「MCSの理論は、まさに戦略対応機能を強化するためにブラッシュアップされてきたのではないかと、俺は思っている。これを使わない手はないんだよ。」

「なるほど。MCSを活用すれば、現場マネジャーはもっと上手く、戦略対応のマネジメントができるだろうという意味ですね。」

「そういうことだ。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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