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マネジメントを再考してみる 前編<現場マネジメント>

第25回

現場マネジャーの役割(現場パフォーマンス向上)(前編)

StrateCutions (ストラテキューションズ)グループ  落藤 伸夫

 
「いよいよ、現場マネジャーの役割について各論ですね。ワクワクします。」

「楽しみにしてくれよ。本邦初公開なんだから。」

「それは本当に楽しみです。と言いながら、最初は『現場のパフォーマンスを向上させる』ですよね。まんまじゃ、ないですか。少しがっかりです。」

「そう言うのか?じゃあ聞くが、現場が高いパフォーマンスをあげられるように、現場マネジャーは何ができるんだ?」

「えっ、それはいろいろと。現場マネジャーは、多分、現場の仕事をよく知っていますよね。だったら、現場が困っている時には助けてあげるとか。」

「ふうん、そうなんだ。時には代わりに仕事をやってやるとか。」

「ということもあるでしょうね。」

「だったら、最初っからマネジャーが現場の仕事をやってやれば良いではないか。」

「それでは現場マネジャーはいなくなります。」

「でも、トラブったり困ったことが起きてから手助けするより、最初からそうならないようにした方が良いのではないか?」

「でも、それでは現場の働き手とマネジャーを分けた意味がなくなります。」

「そうだよ。俺もそう言いたかったんだ。現場マネジャーの役割を『現場が困っている時には助ける』とか『時には代わりに仕事をやってやる』などと定義すると、現場マネジャーが上手く仕事できなくなったり、組織として機能しなくなったりするんだよ。」

「ええ、まあ、確かに、そうです。」

「じゃあ改めて聞くが、現場マネジャーは現場のパフォーマンスを高めるために、何をすべきなのだろう?」

「分かりません。教えて下さい。」


パフォーマンスをあげる3つの方法

「俺は、現場マネジャーが現場のパフォーマンスを高めるためにできる取組みとして3つあると思う。」

「3つですか?」

「そう、3つ。『長所・短所補完メカニズムを機能させること』と、『方向合わせメカニズム』を働かせること。そして『知的外段取りを行うこと』だ。」

「長所・短所補完メカニズムを機能させること』と、『方向合わせメカニズム』を働かせること。そして『知的外段取りを行うこと』ですって?聞いたことがありません。」

「そうか?『長所・短所補完メカニズムを機能させること』と『方向合わせメカニズム』は、ドラッカーがその名著『マネジメント』で提示している方法論だ。」

「えっ!?私は『マネジメント』を読みましたが、そんなこと、気が付かなかったですよ。」

「確かに、そういう名前はついていないけどな。しかし、このことはきっちりと書かれている。次に読む時は、意識して読んでみたらどうだ。」

「はい、そうします。」

「でも『知的外段取り』というのは初めてだろうな。俺が命名した言葉だから。しかし『外段取り』というのは、機械加工などの生産現場では当たり前の考え方だ。」

「なんですか?その外段取りとは?」

「わかった。じゃあ『知的外段取り』から解説していくことにするよ。」


知的外段取り:「段取り」の意味

「では、言葉の『いわれ』から説明するとしよう。ある作業員が工作機械を使って部材を加工しているとする。前行程の現場に行って加工すべき部材を持ち帰り、機械にセッティングしてスタートスイッチを押して加工を始める。機械が動いている間はヒマだな。そして加工が終わったら仕上がりをチェックし、合格した品をトレイに並べて仕上り品置き場にストックしておく。」

「よくある話ですね。我が社でも、基本的にはそのように作業を進めていると思います。」

「そうだ。ちなみに今、俺が言った仕事のうち、価値を生んでいる作業は何だ?」

「価値を生んでいる作業は何だですって?全部ではないですか?』

「前行程の職場に行って加工すべき部材を持ち帰る仕事は価値を生んでいるか?加工した品をトレイに並べて仕上り品置き場にストックしておく作業は価値を生んでいるか?つまり、顧客がそのためにお金を払っているかという意味だが。」

「そう言われてみると、価値を生んでいないですね。」

「そうなんだ。そういう、仕事を進める上ではやらざるを得ないけれども価値を生まない作業のことを『段取り』という。」

「そうなんですか。」

「そして今、私が言った例では、段取り仕事を一連の作業の中でやっていたよな。このことを『内段取り』と言うんだ。」

「内段取りですか。難しい言葉ですね。」

「そうだな。そういうものだと、覚えておいてくれ。」

「でも一つ気が付かないか。この仕事を効率化する方法を。」

「機械のスイッチを押して、加工を待っている間に段取り作業をすれば、効率的ですね。前行程の職場から加工すべき部材を持ち帰ったり、加工した品をトレイに並べて仕上り品置き場にストックしておく仕事です。検査の作業も、この時間にできるかも知れません。」

「そうなんだ。段取り仕事をヒマな時間にやれば、内段取りの場合には必要だった作業時間をまるまる加工に当てられる。」

「価値を生むことができるという訳ですね。」

「その通り!段取り作業を待ち時間にやれば、仕事の効率は非常に高くなる。そのことを『外段取り』と言うんだ。」

「そう聞くと、こっちの言葉はイメージが湧きますね。機械が加工している外で人間が段取り作業をしているということですから。」


知的外段取り:事例

「こうやって考えてみると、『知的外段取り』という言葉の意味も分かってもらえるのではないかと思う。」

「確かに。プランニングや営業の仕事も、価値を生んでいる仕事と、必要だけれど価値を生まない仕事がありそうですね。その仕事を働き手に求めると効率が落ちます。それを誰か代わりにやって『知的外段取り』すれば、効率は飛躍的に上がりそうですね。」

「そうなんだ。例えばどんなのがあると思う?」

「庶務的な仕事の担当者を設けるというのは、昔から行っている方法ですね。」

「良く気付いたな。そういう分担分けをするのは、知的外段取りを実現するマネジメントの重要なポイントだと思う。他にはないか?」

「他ですか?うーん。」


「これから話すことは、保険営業をやっている俺の友人から聞いたことなんだけど。」

「はい。」

「彼は、新しい職場の効率がものすごい、誰もが素晴らしい売上を上げていると言うんだ。その理由を聞くと、マネジメントが良いからだと。」

「そんな、保険の営業なんてシンプルでしょう。どんなマネジメントをしようとパフォーマンスが大きく変わることはないと思いますよ。」

「確かに、俺もそう思った。でも、話を聞いて考えを改めたんだ。」

「どういう話だったんですか?」

「もし、ある営業担当者の売上が振るわなかった時、中川課長だったらどうする?」

「今のやり方が上手くないのだろうから改めるように言います。」

「どう改めるのか、言わないのか?」

「ターゲットにする顧客層を変えるとか。」

「何から何に変えるの?」

「それは考えてもらいます。」

「でもその保険営業は、そのようなことを考えるのがあまり得意ではないのではないか?不得意なことをやらせても、成果を出せないのではないか?」

「まあ、確かに。」

「だからそのマネジャーは、どんな層をターゲットにするのか、自分で考えるようにしたんだそうだ。」

「えっ、そこまでしたのですか?」

「いやいや。それどころか、そのような顧客層にどうやってアプローチすれば良いのか、自分で考えて部下に提案したと聞いた。実際に、訪問すべき顧客を自社のデータベースから抽出してリストを渡したこともあったらしい。」

「そこまでやってやるのですか?」

「しかし、営業マンの仕事は外回りをすることだろう。その時間を減らして、慣れない営業戦略を立て、使えもしないデータベースに向き合わなければならないとしたら。」

「事務所には居たたまれないですね。まずは『行ってきます』と出かけて行って、喫茶店で考えることになるのでしょうか?もっとも、データベースはありませんから答えを出すの難しいですが。」

「そうだろう。それより知的外段取りした方がどれだけパフォーマンスが上がるか。」

「そうですね。私にとってはパラダイムシフトでした。でも、それこそが効果の上がる方法なんですね。」

 

プロフィール

StrateCutions
代表 落藤 伸夫

「世界の先進国では日本だけが一人負け」という話を聞くことがあります。世界が日本を羨んだ “Japan as No.1” からまだ40年ほどしか経っていないのに、当時、途上国といわれていた幾つかの国々の後塵を拝している現状です。

それを打開する方法の一つに、マネジメントを高度化していくことがあると思われます。日本のホワイトカラーの生産性は先進国では最低だといわれていますが、逆に言えば、マネジメントを改善すれば成果を飛躍的に伸ばすことができる可能性があります。

筆者は Bond-BBT MBA でMCS(マネジメント・コントロール・システム)論を学んで以来、マネジメントでもって企業の業績をあげる方法について研究してきました。マネジメントを合理的に考え直し、システムとして組み直すのです。StrateCutionsで行うマネジメント支援の理論的背景や方法論を、お知り頂ければと考えています。


Webサイト:StrateCutions

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